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錆の都の片隅、朽ち果てた教会跡の地下。薄暗い石造りの通路には、腐敗の臭いと冷たさが漂っている。蝋燭のほの暗い灯りが、無数のフードを被った骸教団の信者たちの顔を怪しく照らし出していた。
祭壇の前には、骸教団の高位司祭、骸僧*カラグ*が立っていた。彼は黒いローブに身を包み、顔はフードの影に覆われていて、その表情は見えない。しかし、その体から放たれる禍々しい霊気が、彼がただの信者でないことを周囲に伝えていた。
「……仲間がまた一人、ゴーストバスターに屈した」
カラグの声は低く、そして冷酷であった。彼の言葉に、信者たちの間から小さな動揺の声が上がる。ゴーストバスター――特に鋼谷直樹の存在は、彼らにとって脅威であり、教団の計画を幾度も妨害してきた存在だった。
「だが恐れることはない。我らが骸教団は、敵に屈することもない。ゴーストバスターごときに神聖なる我らが志を阻まれることなどあり得ぬ」
カラグの言葉が響き、信者たちの緊張が解けていく。彼の存在は、まさに骸教団の中で絶対的な支柱だった。彼の持つ異能は、霊を自在に操る「骸操術」。亡者の霊を操り、己の意のままに使役するその力は、錆の都において恐れられている。
カラグが手をかざすと、祭壇の前にある古ぼけた壺が不気味に震え始めた。壺の蓋が音もなく開くと、中から黒い霧のような霊体が現れ、うごめき始める。
「汝ら、我が呼びかけに応じよ。我らが教団のため、尽力せよ」
霊体たちはカラグの命令に従い、形をなさぬままにゆっくりと教団の空気に溶け込んでいく。まるで見えざる刃のように、再び鋼谷直樹らゴーストバスターを狙うために散っていく。
すると、教団の中でも最も過激な部隊「暗影部隊(あんえいぶたい)」のリーダー、夜刀が前に進み出た。夜刀は鋭い眼光を持つ男で、その目には常に冷酷さと狂気が宿っていた。
「カラグ様、このままではただの抵抗にすぎません。いっそのこと、もっと強力な霊力を解放し、錆の都そのものを呪いで覆い尽くすのはどうでしょうか?」
夜刀は一歩前に出ると、敬意を示しながらも冷酷な提案を投げかけた。彼は、もはや戦争という言葉では済まされない、徹底した破壊を望んでいるようだった。だが、カラグは静かに首を振った。
「まだ時ではない。我らが真の目的を遂げるには、ゴーストバスターたちを駆逐するだけでは足りぬ」
彼の声には確固たる意志が込められていた。骸教団はただ幽霊や亡者の力を操るだけでなく、この世界そのものを変革しようとしていたのだ。彼らの信じる「骸の神」が降臨し、この世に新たなる秩序をもたらすための準備が着々と進んでいる。
教団の奥深くには、巨大な石像が安置されている。骸の神を象徴するその像は、何者かを祈り待つように、威厳と不気味さを兼ね備えて佇んでいた。信者たちはこの像に日夜祈りを捧げ、力を授かると信じている。
「皆の者、この世の秩序は間もなく崩れる。我らが骸の神の導きによって、新たなる世界が生まれるのだ」
カラグの言葉に、信者たちは一斉にひざまずき、祈りの姿勢を取った。彼らは骸教団の教えに全てを捧げ、狂信的なまでに神への崇拝を示している。
「そして、最初の血が流れるその日――我らは再び、錆の都を支配するであろう」
教団の地下には祈りと呪詛が混じり合い、不気味な静けさとともに広がっていく。骸教団の暗躍は、さらに深まり、彼らの目的に向かってゆっくりと進んでいた。
鋼谷直樹にとっても、ゴーストバスターたちにとっても、骸教団が進める計画の恐怖はまだ知る由もない。しかし、彼らの活動が続く限り、錆の都には平穏な日常など戻ることはなかった。