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アスタロトは自分に襲い掛かり続ける幻影の善悪と、時折弱々しい攻撃を加えてくる分身善悪を捌き(さばき)続けていた。


相手の聖女と聖戦士の狙いは時間稼ぎ、それも稼いだ所で解決策も無いだろう無駄な足掻き(あがき)だと理解できる、故にこの不毛な茶番に辟易(へきえき)としていた。

だからこそ、ゲームの盤面を強引に進める事にしたのであった。


「解除(リリース)」


そう一言呟くと右手を善悪達の群れに向け、大きく薙ぎ払う様に振るったのである。


何が起ったのか、三十体ほど残っていた幻影善悪が一瞬で消え去り、六体の分身善悪が激しく燃え上がり直後に消し炭と化していく。


「他愛ない、反射(リフレクション)」


燃え上がった分身善悪の中の内一体が善悪本人だと判断したアスタロトは、先ほど解除した反射を再び展開しなおし、残された『聖女と愉快な仲間たち』への警戒を改めるのだった。


――――魂毎燃え尽きたか…… 復活の贄(にえ)を逃した事は残念だが、あの程度の煉獄でくたばるとは、吸収するまでも無い愚物(ぐぶつ)、そういう事だろう…… それよりも


「ここまで辿り着く事が出来たのも、アムシャ・スプンタを従え得たのも、全て、聖女よ、そなたの力故、という事であろうな…… さぞ強靭な力を秘めた魂なのであろう? ふふふ、喰らうのが楽しみだ、ふふふふ」


コユキはでっぷりとした体を揺らして、微笑みながら答えた。


「ああ、どうだろうね? んでもね、アンタに一つだけ言っておくわ、『アタシ』の善悪はそんなに弱くないわよってね、それと…… アタシはね、『安売り』しないんだよって事…… アジ・ダハーカ君!」


「はいっ! 『分身(スキア)』」


その言葉を受けて数十人に増えたコユキ、更にスキル詠唱は続く……


「幻視(ミラージュ)」


最早フロアに溢れかえったコユキは千近くにも及んでいる。

ここまでは善悪の多重ハゲ分身と同様であったが、更に一手が加えられる。

アヴァドンの声が静かに響く、支配者のスキルを孕んで……


「踊れ!」


と、ただ一言。


「「「「「「「「アヴォイダンス」」」」」」」」

「「「「「「「「アヴォイダンス」」」」」」」」

「「「「「「「「アヴォイダンス」」」」」」」」

「「「「「「「「アヴォイダンス」」」」」」」」

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「「「「「「「「アヴォイダンス」」」」」」」」

「「「「「「「「アヴォイダンス」」」」」」」」


一斉に踊るように高速移動を始めた千にも及ぶコユキ達!

残像の姿をも含めれば数万にも達したコユキ塗れ(まみれ)の空間である、気持ち悪いこと甚だ(はなはだ)しい!


ブヨブヨと脂肪を揺らしながら迫るとも無く蠢くコユキ、肉槐には、さしものアスタロトも気持ちが悪かったのであろう、遂に言葉を発するのであった。


「き、気持ち悪いぞっ! 正々堂々と勝負せよ! 卑怯者めがっ!」


その言葉に答えたのは、残像を交えた数万のコユキの腹肉の蠢きであった。


ボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨンボヨン…… ボヨン


「うわあぁぁー! ひいぃっ!」


気も狂いそうなほど焦燥と恐怖を浮かべて叫んだアスタロトの頭上に向けてコユキが言葉を発した。


「今よ善悪! やっちゃって!」


コユキに答える気安い返事が一つ。


「オッケイでござる! 任せてねん!」


その声と同時に、天井に釣り下げられた数匹のヤモリが群がったシャンデリアから身を翻す、密教の坊主、それは善悪その人であったのである。


何故焼き殺された筈の善悪が天井から降ってきたのだろうか?


答えは簡単、アスタロトの前に現れた数十体の中に本物は最初からいなかっただけである。

分身善悪とそれらのコピー、幻影善悪がアスタロトに向かって行く中、本物善悪はコソコソとバレ無い様に石造りの壁をボルダリングしていたのであった。


オルクスがアスタロトへ攻撃を仕掛ける前に伝えたかったヒントは二つ、その内の一つ目が自分が叩きつけられた石壁の真上にぶら下がった善悪の存在だったのである。


こそこそした位で、大魔王とか魔神とか呼ばれる存在の目を欺く事など出来るのだろうか?

答えは否、不可能である。

では何故善悪がバレずにここまで来れたのだろうか?

その理由は、幼き頃より善悪に力を貸してくれた友達とも言うべき存在が、複数のスキルを使ってフォローしていたからに他ならない。


具体的には、アスタロトの興味を強引にコユキのボヨンに移す事で善悪の存在を隠し、善悪の周りにボシェット城に元々生息していたヤモリ達を集め、更には善悪の姿そのものもヤモリに見えるようにしていたのである。


ヒラリ


見た目より遥かに身軽な善悪は、落下しながら何度か回転と捻り(ひねり)を加え、アスタロトの背後に着地した時には右手に真っ赤なロープの片端を握っていた。


ロープはアスタロトの首や両手、胴体と蛇の下半身にユルユルに掛けられていて、背中の真ん中で一纏め(ひとまとめ)になって居り、その結び目から一本伸びた先端が善悪の右手に握られている物だ。


「?」


アスタロトは首を傾げて自分に掛けられたブランブランのロープに手を伸ばし掛けた、その時、善悪のスキンヘッドが激しく光り輝く。

その煌めきに視界を奪われたアスタロトは一瞬、ほんの一瞬だけ全身に気だるさを覚え、その動きを止めた、と、同時に響く善悪の声。


「あらよっと! でござるっ!」


左手を結び目に当てた善悪が、右手のロープを力一杯引き搾ると、あら不思議!

アスタロトがエビ反りの姿勢で縛られてしまったでは無いか!


打撃や斬撃、毒にも一切の苦痛を見せる事がなかったアスタロトであったが、体が硬かったのだろう、背を弓のように反らされながら呻き声を漏らしている。


リフレクションの効果で、ロープも無いのに同様の姿勢で固まっている善悪だったが、こちらは顔面を紅潮させやや呼吸が荒くなっているだけで問題なさそう、どころか口元がヘラヘラとニヤケていて中々に不気味である……


「善悪、だ、大丈夫なのね?」


コユキの大軍の中から届いた声に善悪が返事を返す。


「あぁ~、大丈夫で、ござるよ~、あぁ~」


気持ちが悪かった……

堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

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