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サイド リオ
俺が名前を呼ばないことに、賢いこの少女が気づかないわけがない。
俺が名前を呼ばないのは誰にでもすぐに変装するだけじゃない。
その時に、罪悪感を感じないように。名前を呼ぶことで、その人に情が移ってしまわないように。
……頼りたくなるのを、止めるために。
ずっとそうしてきた。誰かに変装するときだけその人の口調で名前を呼ぶ。
「名前っていうのは、個人を表現する大切なものっすからね」
「……そう、だよね」
……そういえば、この少女は団長のことを名字で呼んでいた。
一番団の中で心を許し合っているように思っていたのに。
「二人はなんで名字で呼び合うんすか?」
「……えっと、ね。ダイチの……キノのお兄さんの、お葬式の、ときに……」
それを聞いて、俺は少しだけ後悔した。
サイド タエ
ダイチが、死んだ。その知らせを受けたとき、私たちの時間が止まったように感じた。
「嘘だろ……?だって、兄ちゃんは、今日も元気で……ルネと遊ぶの楽しみにしてて……!」
「止めようとした時にはもう……本当に、ごめん」
今思えば、ダイチが事故や事件で死んだなら“止めようとした”は、おかしい。
でも、このときは頭が真っ白になって何も考えられなかった。
みんなもそうだったんだろうな。ただ、泣き声が静かになった家に響いていた。
ダイチのお葬式で、私は三人にある提案をした。
「私、は、ダイチが叶えられなかった夢を、叶えたい。だから、モンダイジ団で、いたい」
「……そう、だな。これで止まっていたら、ダイチに怒られる」
「ユズも!ここにいるのは、モンダイジだからだもん!!」
「俺たちで、この世界を変えるんだ!!」
そのあと、ルネが団に入った。そのとき、ダイキが名字で呼んで欲しいって頼んだの。
「俺は、忘れっぽいから兄ちゃんのことまで忘れることが怖えーんだ。忘れたくないし、ずっと憧れだから」
そのとき、本当は少し胸の奧が痛んだの。
……ダイキがダイキじゃなくなる気がしたから。なんだか、一人で遠くに行っちゃう気がしたから。