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帰るべき場所

3 - 第2話 初めての会話

♥

9

2026年02月19日

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朔弥「 」

攻めの人喰『 』

人間【 】

人喰《》




僕はまだ、泣きそうな顔のまま人喰の腕の中にいた。

なぜ自分が抱えられているのかも、よく分からない。

分かるのは、怖い。という僕の本当の気持ちだけ。

「……離して…。」

小さな声で言ってみる。

もしかしたら帰してくれるかもしれない。そんな小さな希望を抱いていた。

でも人喰は、腕をほんの少し強く抱き直すだけだった。

『大丈夫だ。危なくない。』

声は低く、とても落ち着いていた。

でも、僕の気持ちのざわめきは消えない。

どんなに安心させられても、この体が安心それを拒絶してるみたいだった。

「…なんで、ぼくを…。」

一番の疑問だった。

怖くて言葉が途中で途切れる。

どうして僕はここにいるのか。

何をされるのか。

まだ何も分からない。

(もしかしたら殺されるのかもしれない。)

そんな恐怖がずっと僕の心の中身あった。

ルシアンは少しだけ目を細め、僕を見た。

その目はうっすらと光っていて、人の目じゃないことがはっきり分かる。

『気になったからだ。』

──気になった…?

意味がわからなくて僕は首を傾げた。

「……気になった…だけ?」

人喰は軽く肩を竦めて笑った。

怖いのに、不思議と胸がギュッ、となる。

『そうだ。大した理由なんて無い。』

理由がないのに僕を連れてくって……どういうことだろう。

いくら逃げたくても体は重くて動かない。

「…いやだ…。」

声が震える。

反論したら何をされるか分からなかったから。

でも、人喰は僕に何もしなかった。

腕の中で僕を抱えたまま、静かに歩いている。

『…怖いのか?』

「…うん…。」

『なら、安心しろ。俺が守る。』

僕にその言葉の意味は、まだ全部理解できない。

でも…少しだけ、ほんの少しだけ、心が震えた。

──この人喰に、守られるのか。

怖いはずなのに、どこか安心もしてしまう。

森の奥に続く道を歩きながら、僕は思った。

──この道がどこに続いているのか、まだ分からない。…でも、逃げられないのは確かだ。

──…それなら、名前ぐらい聞こう。名前が分からないのは、もっと怖くなるだけ。

「…名前…なんて言うの…?」

『ルシアン』

「る、しあん…?」

口に出して呼ぶと、少しだけ不思議な安心感があった。

名前は分かった。

でも、名前以外まだ知らない。

『…お前は?』

「ぼ、ぼく…?…ぼくは…さく、や…。」

『…サクヤ。…俺の名前は覚えていてくれなくていい。何度でも教えてやる。』

その言葉に、胸の奥がギュッと締め付けれた。

怖いのに、守ってくれそうで。

こんな気持ち、初めてだった。

森を抜けた先に、何があるのか分からない。

だけど、僕は覚悟した。

──これから先も、ずっとルシアンと一緒なのかもしれない、と。

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