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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

291 - 20話 神器とはお洒落なブーツのことであった。

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2024年07月23日

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「セ、セイくん…?」

痛みに耐え切った聖奈は、その痛みが止むと気を失った。

俺は聖奈を抱き抱え、起こすのは忍びないので、そのままその時を待っていたところ、聖奈が徐に目を開いた。

「おっ。起きたか。どうだ?まだどこか痛むか?」

「ううん。でも、疲れからか、身体が怠いかな」

「じゃあ何も気にせず、そのまま休んでいたら良いよ」

俺は幼子をあやすように、空いた手で聖奈の髪を撫でた。

やはり疲れているようで、すぐに瞼を閉じて、すやすやと眠りについた。

「寝ちゃいましたね」

「ああ。ここからも人の営みは見つけられなかったから、今日の所は帰ろうか」

「私が転移するわ」

頼む。俺がそう返すと、次の瞬間には船の上だった。

詠唱破棄ってどうやるんだ?






「おっ。起きたか」

あの後すぐに地球へと帰った俺は、聖奈が寝ているので四人分のご飯を買いに、一人日本へと行っていた。

そして夕飯を買って戻ると、食卓には聖奈の姿も確認できた。

「ごめんね?心配かけちゃったね」

「いや?心配はしていなかったぞ。可哀想ではあったけどな…」

俺がそう言うと、聖奈は苦笑いで返してきた。

ルナ様の手前、心配していたなんて言えないし、そもそも神様の行ったことに対して、心配するなんて烏滸がましいよな。

「鼻からスイカが出てくるくらい痛かったよ…」

「それは出産の喩えじゃ……」

こんな冗談を言えるくらいには、どうやら問題はないみたいだな。

「それで?どんな感じだ?」

「うーーん。実はこれと言って、よくわかんないんだよね」

「それはそうよ」

俺が聖奈に聞けば、よくわからないと返ってきた。

そしてそんな俺達を見かねてか、ルナ様が割って入る。

「器を広げただけだから、それが満たされればいつも通りね。魔法を使えばわかるでしょうから、明日を楽しみに待っていなさい」

「はい!ありがとうございます!」

聖奈は恭しくその形の良い頭を下げた。

確かに魔力総量が増えたからといって、それが満たされていたら少なくても多くても感覚的にはわからないよな。

俺達は明日の冒険に備え、ゆっくりと過ごすことにした。






「『アイスブロック』」

覚束ない詠唱の後、見慣れた氷の塊が上空から落下してくる。

ドーーンッ

山の頂上から放たれた魔法は、眼下に広がる森へと吸い込まれ、地響きと砂煙をあげた。

「やったよっ!!遂に私も上級魔法が補助具無しで使えたよっ!!」

「良かったな。ルナ様に感謝しろよ」

し過ぎなくらい感謝しているのは知っているが、一応な?

「ありがとうございました!お陰様で戦いでもセイくんの役に立てますっ!!」

「良いのよ。このボンクラの役に立つかどうかはどうでもいいの。貴女の危険が一つでも減らせたのなら、私にはそれが一番嬉しいわ」

遂にボンクラと来たか……

まぁ酒飲みで、金勘定がザルで、ハーレム野郎なんて、ボンクラ間違い無しだからな。

「あの…一つ宜しいでしょうか?」

「何かしら?」

珍しく聖奈がルナ様に何かを聞くみたいだ。

「私の魔力はどれくらいになったのでしょうか?」

「ああ、そんなこと。いいわ。教えてあげる。聖奈なら時間さえあれば調べられるでしょうしね」

そりゃ気になるよな…俺みたいに贅沢づかいが出来るなら兎も角。

「聖奈の魔力量はさっきの魔法十回分ね。貴女の魔力制御であれば、身体強化なら五倍くらいまで使えるわ。20分程で枯渇するでしょうけどね」

「ありがとうございます!私が五倍の…界◯拳……」

いや、そのネタはとっくに使っているから。

二番煎じはウケないぞっ!!


ここは三つ目の山で、今は夕刻前。


聖奈はまたもや瞑想を始めたから、俺とミランで変化がないか注意深く観察している。

そんな俺達に…いや、ミランへと声が掛けられた。

「ミラン」

「はいっ!何でしょうか?」

っ!!

ミランのレスポンスの速さに、話しかけた側のルナ様がビクッと身体を震わせた。

流石ぼっち歴が長いだけはあるな…哀しいさがよ。

「あ、貴女には別のモノをあげるわ。この世界で生まれ落ちた貴女の魔力に手を出すと、あまり良くはないから別のモノになるけど」

「わ、私にも何か頂けるのですかっ!?」

「え、ええ。あまり期待しないでね?大したモノではないの」

神様からの贈り物だからな。

否が応でも期待してしまうだろう。

「これよ」

ど、どこから取り出したんだ?

ルナ様は徐ろに手を前へ出すと、その手の上には一足のブーツが。

流石神様。魔法の鞄みたいな魔法かな?

「これは…カッコいいブーツですね」

ブーツは革製に見える。

そして柄が入っていてオシャレだが、可愛いというよりはカッコいい品だ。

サイズが合えば俺が欲しいくらいには。

「このブーツを履いてみなさい。ピッタリのはずよ」

「はい。有り難く、頂戴いたします」

恭しくブーツを受け取ったミランは、恐る恐るそのブーツに細くしなやかな足を通した。

「どう?」

「えっと…素晴らしい履き心地です。見た目よりも随分と軽いですね。これならば、これからの登山が楽になります。ありがとうございます」

どうと問われ、ミランは一拍置いて、100点の解答を導き出した。

さすミラっ!!

「ふふ。違うわ。それは確かに人が作るものよりも丈夫で履きやすいわ。でもね。それの一番の特徴は、空を踏めることよ」

「えっ…空…ですか?」

「ええ。私の靴と同じようなものよ」

そいつはすげーや!!俺もほちぃ……

そーらをじゆうに、とびたいなぁ…はいっ!カッコいいブーツっ!!

「さっ。歩いてみなさい」

トンッ

「きゃあっ!?」

ルナ様に背中を押されたミランは、山頂から身を投げ出した。

あまりの理解を越えた出来事に、俺はただ驚きを通り越して、それを眺めることしか出来なかった。

「ひゃあっ!!……って、あれ?私立ってます?」

ルナ様に突き飛ばされたミランは、何もない空中で、いつも通りに立っていた。

「た、立っているぞ…ほら。危ないからこっちに戻ってこい」

現実を受け入れた俺は、受け入れたからこそ、その危険な状況を見ていられなくなった。

ミランは恐る恐る空中を歩いて、こちらへと戻ってきた。

「どうかしら?」

「す、素晴らしいです…あまりにも現実離れしているので、大した感想も言えず…申し訳ないです」

「良いのよ。気に入って貰えたなら、それが一番よ」

遂に仲間が空を飛びだしたな……

飛んだと言うよりは、歩けるようになった、が正しいか。

「はいっ!!ありがとうございます!これでより、セイさんとルナ様のお役に立てますっ!!」

いや、いいから。

危険が迫れば空に逃げるんだぞ?

「ふふっ。本当に貴女は素直で良い子ね。でも、気をつけなさい?その能力は貴女の魔力を使うわ。魔力切れを起こしたらそのまま落下するから、1時間程度を目安に休憩しなさい」

「わかりました。どの様に使えば良いのでしょうか?」

「特別な技術はいらないわ。貴女の意思で使えるから、慣れることね」

「わかりました。決して無駄にしないよう、精進致します」

堅い…堅いぞミラン。

見てみろ。

贈り物をしたのに何も変わらないじゃないっ!って、こっちを見ているじゃないか。

よし。気付いていないフリをしよう。


「ん?おいっ!アレって煙じゃないかっ!?」

ルナ様から外した視線を眼下に広がる森へと向ける。

すると、先程までは変化のなかった森に、一筋の白い煙が立ち昇っているのを、俺の目が捉えた。

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