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コメント
3件
ああ……このエピソード、すごく好きです。アルフレッドが「リュシアン、さみしそうだった」って気づくところ、胸がぎゅっとなりました。大人たちは「感情がない」と思ってるけど、幼い王子だけはリュシアンの本当の気持ちを感じ取ってるのが切なくて温かい……。あの笑顔を隠してしまうリュシアンの我慢強さも、もう愛おしいです。二人の出会いのシーン、ちゃんと心に残りました。続きが気になります🤍
第三話 『はじめての友達』
三歳の春。
アルヴェイン伯爵家の屋敷は、朝から慌ただしかった。
「リュシアン様、お召し物はこちらでよろしいですか?」
「……うん。」
侍女が白を基調とした小さな礼服を整える。
鏡に映る銀髪の少年は、今日も静かな表情だった。
「緊張していらっしゃるのですね……。」
(違うんだけどなぁ。)
今日は、王城へ向かう日だった。
父が王家に呼ばれたらしい。
そして当然、息子であるリュシアンも同行する。
(つまり……。)
(今日、みんなと初めて会う。)
前世では画面越しに見ていた攻略対象たち。
幼馴染になる運命の日。
嬉しくないわけではない。
むしろ会いたかった。
だけど。
(……もし未来が変わらなかったら。)
その考えが頭をよぎるたび、胸が苦しくなる。
――守りたい。
絶対に。
◇◇◇
豪華な王城。
赤い絨毯。
高い天井。
磨き上げられた大理石。
「ようこそ、お待ちしておりました。」
案内された先には、国王夫妻と王妃がいた。
父と母が挨拶を交わす。
リュシアンも、小さく礼をした。
「初めまして。」
国王は目を細めた。
「噂通り、礼儀正しい子だ。」
王妃はしゃがみ込み、優しく微笑む。
「今日はね、お友達を紹介するの。」
その言葉と同時に。
ぱたぱたと小さな足音が聞こえた。
「母上ー!」
部屋へ飛び込んできたのは、一人の男の子。
金色の髪。
青い瞳。
まだ幼いのに、どこか凛とした空気をまとっている。
(アルフレッド。)
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モブD
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#恋愛
ばたっちゅ
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#微糖
思わず心の中で名前を呼ぶ。
未来の第一王子。
そして、幼馴染。
「アル、この子がリュシアンよ。」
「仲良くしてあげてね。」
アルフレッドはリュシアンの前まで来ると、じっと見つめた。
「……きれい。」
ぽつり、と呟く。
リュシアンは少し驚いた。
「え?」
「お月さまみたい。」
にこっと笑うアルフレッド。
(かわいい……。)
ゲームでは完璧な王子様だった彼も、今はまだ三歳の男の子だった。
「ぼく、アルフレッド!」
「リュシアン。」
「うん!」
アルフレッドは迷いなく手を差し出した。
その小さな手を見つめる。
(この子は……。)
(未来で俺を失って壊れる。)
そんな未来は、絶対に嫌だ。
だから。
リュシアンは、その手を握った。
「よろしく。」
「うん!」
その瞬間。
アルフレッドは満面の笑みを浮かべた。
その笑顔を見た途端。
(……よかった。)
胸がじんわりと温かくなる。
その感情に気付き、リュシアンは慌てて心を落ち着かせた。
(だめ。)
(感情を揺らすな。)
深呼吸をする。
表情はまた静かになった。
しかし。
アルフレッドは少しだけ寂しそうな顔をした。
「……リュシアン。」
「?」
「ぼく、なにかしちゃった?」
「え?」
「わらってくれない……。」
リュシアンは固まった。
(しまった。)
三歳の子どもにまで気を遣わせてしまった。
「ちがう。」
「……?」
「アルは、わるくない。」
そう答えると、アルフレッドはほっと息をついた。
「よかった!」
無邪気な笑顔。
その姿を見ていた大人たちは、小さく微笑む。
けれど。
王妃だけは少しだけ切なそうだった。
「あの子、本当に噂通りなのね……。」
母は目を伏せる。
「ええ。」
「感情を表に出せなくなってしまったのです。」
「魔力の代償で……。」
リュシアンの耳に、その言葉が届く。
(違う。)
(本当に違うんです。)
でも。
言えない。
◇◇◇
その日の帰り道。
馬車の中で、アルフレッドは何度も手を振っていた。
「また遊ぼうね!」
「うん。」
リュシアンも小さく手を振り返す。
その姿が見えなくなるまで。
ずっと。
◇◇◇
王城の窓辺。
アルフレッドは去っていく馬車を見つめていた。
「母上。」
「どうしたの?」
「リュシアン、さみしそうだった。」
王妃は少し驚く。
「どうしてそう思うの?」
「だって。」
幼い王子は、ぎゅっと胸の前で手を握った。
「ぼくがわらったとき。」
「リュシアン、すこしだけうれしそうだった。」
「でも、すぐにかくしちゃった。」
王妃は息を呑む。
大人たちは「感情がない」と思っていた。
けれど。
三歳のアルフレッドだけは違った。
「あの子、ちゃんとわらえるんだ。」
「ただ……。」
「がまんしてるだけなんだ。」
誰にも気付かれなかった、小さな違和感。
それに最初に気付いたのは、まだ幼い王子だった。
一方その頃。
馬車に揺られるリュシアンは、小さく胸に手を当てる。
(アル……。)
(君は本当に優しいね。)
その言葉は口には出さない。
出せばきっと、また涙が零れてしまう気がしたから。
こうして二人は出会った。
まだ何も知らない、三歳の春。
この小さな出会いが、やがて運命そのものを変えていくことになるとは、誰も知らなかった。