episode2.
注意喚起はPrologをご覧下さい。
SIXFONIAの活動は順調だった。ライブも大盛況。ファンはすちの「主人公系イケボ」に熱狂する。
しかし、すち自身は、ステージ上でさえ恐怖と戦っていた。
グループでの歌唱中、他のメンバーの歌声はクリアなのに、すちがマイクに近づくと、一瞬、音響が乱れる。
そして、客席の熱狂が、すちには「偽りの歓声」のように聞こえ始めた。彼の内なる声が、囁き続けるからだ。
『その光は、影を濃くするだけだ』
『お前の本当の姿を見せてやれ』
ある日の深夜、自宅の防音室。
すちは一人、鏡に向かって立っていた。
彼は、自分を追い詰める「影の声」に、正面から向き合おうと決意した。
「お前は誰なんだよッ、?」
鏡の中のすちが、ニヤリと笑った。その黄色い瞳は、一瞬、底知れない黒に染まる。
『お前だよ、すち。お前の、主人公になりたかった弱い部分だ』
『お前が光を演じるほど、俺は、お前の闇の中で育つ』
影の声は、すちが過去に抱えていたコンプレックスや、表には出せない弱さを抉り出し始めた。
完璧な「主人公」でいなければならないという強迫観念が、内側に生み出した「怪物」。
すちは気づく。彼の「主人公系イケボ」は、闇を押し込めるための、檻だったのだ。