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episode3.
注意喚起はPrologをご覧下さい。
メンバーにも異変が伝わり始めた。レコーディング中、すちの歌声だけが妙に冷たい、と。
「すち、最近元気ないんじゃないか?顔色悪いぞ」
心配するメンバーたちに、すちは「大丈夫」と、いつもの「主人公の笑顔」を見せる。しかし、その笑顔の裏で、彼は「影の声」との対話に疲弊しきっていた。
次のライブ。それは、すちにとって正念場だった。
ステージに立つすち。照明は眩しい。観客のペンライトが揺れる。
曲が始まり、すちがマイクに向かう。
『さあ、見せてやれ。お前の真実を』
影の声が、彼の喉を支配しようとする。
すちは、抵抗した。彼の本質である「光」を信じて、声を振り絞る。
「(これは、俺の歌なんだッ、!)」
しかし、その声は、途中で途切れた。
『……もう、疲れただろ?』
その瞬間、すちの喉から出たのは、彼の声でありながら、全く別の「歌」だった。
それは、絶望と、諦念と、世界への呪いが込められた、悪意の歌声。
客席が静まり返る。ペンライトの光が、まるで生命を失ったかのように、弱く揺らぐ。
すちの赤い瞳は、完全に闇に侵食されていた。
彼の歌声は、ホール全体を、冷たい「黒い膜」で包み込む。
観客は動けない。ただ、その「闇の歌声」を浴びる。
それは、魂を直接、冷たい水に沈めるような、絶対的な恐怖だった。
隣にいたメンバーの一人が、震える手で、すちの肩に触れた。
「す、すち……やめろ!」
その接触が、すちの意識をわずかに呼び戻した。
ハッとして、マイクから離れる。
ホールは静寂に包まれていた。
そして、闇の歌声は、最後に一つの言葉を残して消えた。
『――また、会おう』
エピローグ