テラーノベル
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目黒がいない翌日の学校は、
いつもよりざわついていた。
「なぁ、今日も来てねぇけど」
「バックレたんじゃね?」
「昨日あんな陰キャ、押したら倒れんじゃねーかってくらい細かったしな」
廊下で笑いながら話すいじめグループ。
その空気を、康二は遠くからじっと見ていた。
表情は無。
ただ、その目だけが冷たかった。
——蓮に触れた手で、よく笑えるな。
担任が教室に入ってくると、
「目黒蓮が家に帰っていないらしい」と話した。
教室中にざわめきが走る。
「え、家出?」「不登校?」
「もしかしてどっかで死んだんじゃね?」
その軽々しい言葉の一つ一つが、
康二の神経を逆なでする。
(……お前らにだけは、絶対触らせへん)
席に座っている間も、
康二の指先はずっと小さく震えていた。
⸻
***
そのころ、
目黒は薄暗いアパートの部屋で目を覚ました。
天井は低く、朝日が少しだけ差し込む。
布団の隣には、康二の上着。
——温度が残っている。
「……康二くん……」
名前を呼んだだけで胸がじんと熱くなる。
昨日までの学校の喧騒が嘘みたいだ。
ここには誰も来ない。
誰も見つけない。
逃げる場所じゃなくて、
“守られる場所”になっていた。
玄関の鍵が開く音がして、
目黒は思わず身を固くした。
「蓮、起きとったん?」
康二の声がして、
目黒は一気に安心する。
「……おかえり」
その言葉は、まるで家族に向けるみたいに自然に出た。
康二はコンビニ袋を置き、
目黒の頭を軽く撫でた。
「学校な、めっちゃ騒いどったで」
「……俺のこと?」
「あぁ。探してた。でも——」
康二は視線を伏せずに言う。
「誰にも見つけさせる気ないから」
その言葉に、目黒の胸がきゅっと締まった。
「……俺がいないって、心配だった?」
弱さが滲む声で問うと、康二はゆっくり目を細めた。
「心配どころか……
誰よりも俺が蓮を必要としてる」
その瞬間、目黒の呼吸が止まる。
康二は続ける。
「お前がいなくなったら……俺、壊れるから」
——それは、優しさと同じくらい重い言葉だった。
でも目黒には、それが心地良かった。
「……じゃあ、離れない」
「そや。離れんな」
康二がそっと抱き寄せると、
目黒の体が自然とその腕に沈む。
外では、
目黒を探す声が広がっている。
だがこの部屋は、
その全てを遮断していた。
ふたりは、外の世界から消えていくように
ゆっくりと依存を深めていった。
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コメント
2件
1コメ! 最高すぎる!めめとこーじの関係が段々ドロドロっていうかなんていうかそういう感じ((?になってきていて早く次の話が見たいです! (失礼な事を書いてしまっていたらすみません😭)