テラーノベル
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” 「俺のどんなところが好き?」
急な質問に私は驚いた。
「急だね笑どーしたの」
照れくさく、笑いながら返した。
“「俺を好きになった理由は?」
彼はとても真剣な顔をして聞いてきた。
「んーと、優しくてかっこよくてとにかく一途なところ」
“「そっか、ありがとう」
彼は嬉しそうな悲しそうなよく分からない表情をしていた。
「でも、どうして急に? 」
“「彼女がいるって当たり前じゃないなって」
「なにそれ笑不思議な人」
また笑って返した。
“「じゃあ、もし俺が嫌いになったらどうする?」
「またすきになってもらう」
“「俺の足がなくなったら?」
「それでも一緒にずっといる。足がないとか関係ないよ」
“「優しいな、やっぱ世界一の彼女をもった俺は幸せもの」
「大袈裟だなあ笑ほんと急にどうしたの」
“「俺はずっと大好きだからね」
「わたしもだよ」
彼は微笑んだ。
私は翌日、彼の母から聞いた。
彼が亡くなったって。
体が震えた。頭が真っ白になって、訳わかんなくなった。
がんが原因で亡くなったんだって。
昨日まで話してたのに。辛くて苦しくて彼の事が頭から離れられない。目は充血し、涙が止まらなかった。どうして彼が死ななきゃいけないの。何度も何度も思った。
そんな時、彼の母からきいた。
“「一ヶ月前に余命宣告されたの」
亡くなる前から分かってたんだ。
どうして彼は教えてくれなかったんだろう。
“「心配させたくなかったんだって」
“「あの子、ずっと泣いてたの。」
私は分からなかった。彼が私の知らないところで泣いてるなんて。気付いてあげられなかった。いつも無理して笑ってたんだ。
“「大好きなのね、あの子、ほんとにあなたの事が」
それを聞いてまた涙が溢れた。
彼の葬式がおわった。彼がいないんだって実感するのが嫌だ。
彼の母から
“「あの子から、あなたに渡してほしいといわれたの」
そう言いながらノートと手紙を渡された。
私はノートを開いた。
11月1日
俺は今日余命宣告をされた。だから日記を書くことにした。もっと彼女といたい。ずっとこの先も。
11月2日
大好きな人の誕生日二日前だ。
精一杯、祝ってあげなくちゃ。最後の祝いにもなるのか。辛えな。
11月3日
いよいよ明日は誕生日だな。早く会って喜ぶ姿が見たい。どんな反応するんだろ。ケーキ美味しく食べてくれるかな。たのしみ。
私はまた涙が溢れてきた。彼は欠かさず、
死ぬと言われた日から亡くなる日までずっと日記を書いていたことがわかった。
ページを開く度に涙で紙が濡れていく。
11月29日
今日、会えてほんと良かった。こんなに俺を愛してくれる人なんてどこにもいない。大好きな人。忘れられない人。もっと一緒にいたい。明日も明後日も来年も、ずっと。俺の夢は叶わないな。
日記はそこで終わっていた。私はもう片方の手に持っている手紙を 開いた。
大好きな人へ
俺は君に出会えて良かった。
この幸せが当たり前じゃない事に気づいたんだ。この3年間、ほんとに幸せでした。いっぱい迷惑かけたかもしれないし、不安にさせた事もあったけど最後まで 俺を信じてくれて好きなままでいてくれて本当にありがとう。
ずっと大好きです。11月30日 “より
手紙の字は日記とは違うほど、震えていたような文字だった。死ぬのが怖かったんだろうなって。どれだけ辛かったんだろうって、そう思った。
手紙の中にはもうひとつ袋に包まれ
なにか入っていた。
押し花だった。
私は花が好きで花言葉もよく知っている。
手紙を書いた日は11月30日、花はカスミソウ。
花言葉は、
─永遠の愛。
彼女は静かに崩れ落ちた。
#創作
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