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スマホの通知が光ったのは、ぼんやりと眠れぬ夜を過ごしていた午前1時半のことだった。
━━ナルニアからだった。
通知を見た瞬間、胸の奥がキュッと傷んだ。
もう連絡は来ないと思っていた。
連絡してはいけないと思っていた。
それなのに、どうして___
メッセージはただ一言だった。
「まだ、好きです。」
…..ずるい。
そんなふうに、まっすぐに伝えられるなんて。
何も無かったように、好きと言ってくれるなんて。
読んだ瞬間、涙が頬を伝っていた
息を吸っても胸が苦しくて、
どう返したらいいか、まったくわからなかった。
本当はずっと忘れたかった
思い出を”いいもの”にしようと、蓋をしてきた。
ナルニアの名前を呼ばないようにして、何気ない景色の中に君が混ざらないようにして。
……でも、
「まだ、好き」なんて言われたら、わたしだって答えたくなる。
けど、また傷ついたらどうしよう。
また終わってしまったら、今度こそ立ち上がれない気がして。
既読だけを付けて、あゆは返事を打つことができないままだった。
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数日後
外出先からの帰り道、玄関前でヒト影に気づいて、立ち止まった。
スーツの襟を少しだけ緩めて、
まるで、来ることを何度も躊躇ったような顔で。
そこにいたのはナルニアだった。
「…….ごめん、急に」
「なんで、なんで来たの」
声が、震える
「返事、来なかったから」
〇〇は目を伏せた。
顔を見てしまったら、全部が崩れてしまいそうだった。
ああ、この人やっぱりずるいなぁ。
「……..怒ってる?」
ナルニアがそう言う。
「…..違う」
「じゃあ嫌いになった?」
「…..それも、違う」
「…..まだ、好き?」
〇〇は俯いたまま、小さく首を横に振る。
けれど、そのあと。
泣きそうな声で、ぽつりと呟いた
「……..好き、だった。し、たぶん、今も….」
ナルニアはそっと、ポケットから〇〇へのメッセージを見せた。
「その一言だけが、私にできる全部だった」
「….その一言で、全部思い出したの。全部……戻ってきちゃったの」
〇〇の声が震え、ぽろりと涙がこぼれる。
それを見て、ナルニアはゆっくり歩み寄り、そっと、
でも確かに〇〇を抱きしめた。
何も言わず、ただその体温を伝えるように。
「会いに来てよかった」
「….ずるい。ほんとにずるいよ、ナルニア」
ナルニアが口を開く。
「……私も怖かったんだ、ずっと」
〇〇の涙がナルニアの胸に染みていく。
まだ”やり直す”とも、”戻る”とも言えない。
でも、また「ここから」始められるのなら。
それだけで、今は十分だった。