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雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

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雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

113 - 第113話 急 決意と結論⑤ 抗えぬ心

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2025年07月24日

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※冥王様から聞いて、キミも分かっただろう? 狂座はこれまでに幾多もの歴史ーー平行世界を消して来た事を……ね。



ボクは今から十年程前、確かこの世界の六個前の平行世界、唯一の生き残りだ。



狂座は大体一年程で、世界そのものを消し去ってきた。その期間、地球の半分程の人間を“ゆっくり”と虐殺し、残りはそのまま星そのものと運命を共にさせる。その過程で見込みのある者は狂座入りが赦され、生き残る事が出来る。



勿論、盟約として悠久の刻を生きる権利を強制的に与えられてね……。



理由? 全ては冥王様の退屈しのぎの一環だよ。



ボクは冥王様に、この人の心を映す特殊な潜在能力を見出だされ、狂座入りした。



住んでた街も、親も他の人達も皆殺され、最後は宇宙空間からこのエルドアーク宮殿内にて、地球が宇宙の藻屑となる瞬間も見たよ……。



冥王様が光を放った瞬間、地球がまるで花火の様に消え散ったのを見た時、ボクは此処でしか生きて行けない事を思い知らされた。



そして新参者でありながら、早期直属に任命されてボクを待っていたのがーーアザミとルヅキの二人だった。



二人は直属の中で最も権力を持ちながら、新参者であるボクに目を掛けてくれた……。この世界でたった一人だと思ってたボクに。



何時の間にか二人はボクにとって、本当の兄と姉みたいな存在になっていたんだ。



狂座は最悪でも……二人が居たからボクは生きて行けると、そう思ってたのにーー





***



「そ、そんな事が……」



ユーリが語った凄惨な過去に。そしてやはり狂座が世界を消し去ってきたという事実に、アミとミオは戸惑いを隠せない。



「だからーーボクの生きる意味でもあった二人を奪ったキミは、絶対に許さない!」



そうユーリは思いの丈をぶつける様、ユキの左手の甲へ短刀を突き刺した。



「ぐっ!」



完全に貫通したその感覚に、ユキは呻き声を漏らした。



「ほら? 泣き喚いて命乞いしろよ! キミの苦しみだけがボクの気を晴らしてくれるんだからね!」



ユーリは泣いているかのような怒っているかのような、どちらとも取れぬ叫びで刺した短刀をえぐり回しながら、ユキへ命乞いの懇願を促す。



「…………」



勿論、命乞いをした処で見逃す筈はない。彼女はユキの心を折りたいのだ。ただ殺すだけでは意味を成さない、気が晴れない。それが分かっているからこそ、ユキは命乞いも苦痛も漏らさずただ耐えていた。



「もうやめて! 貴女の気持ちは分かるわ。でも、こんなやり方は間違ってる」



立ち上がったアミがユーリを止めようと諌めるがーー



「黙れよ。未だこの世界が存続してるキミ達に、全て失ったボクの気持ちが分かるはずがないだろ!」



ユーリは手を止め、痛烈に批難した。その殺気にアミは思わず気圧されそうになる。



「ええ、分かりませんね。アナタの気持ちなど」



「ーーっ! まだ減らず口叩けるのかよ!」



不意に口を挟んだユキへ怒り心頭のユーリが、今度は彼の右手の甲へと短刀を突き刺した。



「……痛み等で私を屈せれるとでも?」



だがユキは意に介さない。痛覚が無い訳ではない。



「アザミとルヅキ、彼らとは命を掛けて闘った。その想いは何人たりとも侵す事は出来ない。それに比べてアナタは何です? ただ怒りに任せてヒステリーを起こしているだけ。そんな想いでは、決して私を折る事など出来はしない!」



両の手の甲が貫通しているのも構わず、ユキは立ち上がる。その姿にユーリは思わず気圧され、退いていた。



「なっ……」



何よりーー自分自身を見透かされたような気がして。



「もう……いいや。もっと痛めつけてから殺すつもりだったけど、今すぐ終わらせてやるよ!」



折れないユキに業を煮やしたのか、ユーリが短刀を彼の心臓へ向けて狙いを定める。



「立ち上がった処で、状況は何も変わらないんだからね」



そう、ユキは彼女の力を破った訳ではない。ユーリがユキの心を映し出したアミの姿をしている限り、決して手を出す事は出来ない事を。



「…………」



事実、ユキは無防備にも動けないでいる。



「ユキ! 私を否定して! 私は何も気にしてないから!」



動かないユキを見てとったアミが、そう懇願する。



「無理だね。例え死ぬ事になろうとも、彼は覆さない。キミの為なら死さえも受け入れてるんだからね」



ユーリの言葉の意味を、アミも深い程に分かっていた。ユキは自分の為に、決して自身を顧みない事を。



「ユキ……お願い」



それでも願わずにはいられない。覆さぬ事が分かっていても、自分より自身を優先して欲しい事を。



「キミも彼女の為に死ねるなら本望だろ?」



「……くっ」



どうしても抗えぬユキへ向けて、心臓刺突の為に短刀を水平にしたユーリは狙いを定めーー



“ユキ……私の為に死んでーー”



「じゃあ、さようなら」



最後はアミの声帯と心の声でーー突進。

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