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ジミンside
絶対安静がとけてから数日、ジン先生が病室にやってきた。
「あのさ、ジミナ入院してからあんまりごはん食べられてないでしょ?」
「う、うん…。食べようと思ってるんだけど、どうしても食欲が湧かなくて…食べると吐き気がしちゃうんだ…ジン先生ごめんなさい…。」
「謝らなくていいんだよ。でもねジミナ、このまま食べられないようだと、ジミナの身体に必要な栄養を点滴から全て取ることは難しいんだ。だからさ、嫌かもしれないけど、鼻にチューブを挿れて、胃に直接ごはんを入れるようにしたいんだけど。…いいかな?」
「それ……やらなきゃ…ダメなの?」
「うーん。そうだね…。身体に栄養が足りないと、ジミナの心臓にもますます負担がかかってしまうんだよ。」
「鼻にチューブを挿れたら、ずっとそのままなの?」
「そうだね。ずっとじゃないけど、ジミナが口からごはんを食べれるようになるまではね…」
「いやー……(泣)」
「チューブを挿れたら、もうまるっきり食べられないって訳じゃないんだよ?口からも食べれるし、ジミンの好きなお菓子だって、食べてもいいから」
「チューブ挿れるの…痛いのかな…?」
「そうだね。鼻の奥を通る時は、少し痛いかもしれない。あと、違和感があるかも。それから3日にいっぺん、チューブの入れ替えをしなくちゃならないんだ。」
「え?その度に、また、鼻から挿れるってこと…?」
「うん。清潔に使う為に、そうしなきゃならないんだ。ごめんねぇ。」
「ジミナ、今から、その管の挿入してもいいかなぁ?」
「う…ん。(泣)」
心の準備ができないままに、ジン先生と看護師さんが鼻に入れるチューブを用意して持ってきた。思ったよりもすごく太い管…こんなの鼻から挿れるの?絶対痛いじゃん…(泣)。
「ジミナごめんなー。ちょっと顔抑えるよ。動いたら危ないからね、ゆっくり口で息をしててね」
僕は看護師さんに顔をしっかりと固定されてしまい、ジン先生がその太いチューブを鼻に挿れていく。
「い、いたっ!…ゲホゲホゲホッ…」
鼻がつんと痛くて、ズルズルと異物が入っていく言いようのない不快感…。僕は思わず咳き込んでしまった。
「ごめんねー今鼻の奥のいちばん細くなってるとこ通るよー。痛いねーがまんしてね」
「はい、口までいったよー。唾ゴックンできるかな。飲み込んでー。」
「ゲホッ…ゴクッ…(泣)」
「上手上手。もう半分以上いったよーあともう少しで胃までいくからね。」
「はい、終わったよー。よくがんばった!」
ようやく挿入は終わり、チューブがずれないように僕の頬にテープが貼られた。鼻と口に常に何かが詰まっているような、今まで感じたことのない違和感。思ったよりも、ずっと痛い…(泣)。
お昼になると、看護師さんがチューブから入れる栄養剤を持って来た。もう僕には普通の食事は運ばれてこないんだ……。泣きそうになるのをなんとか堪える。
栄養剤の注入が始まった。入ってくるのは分かるんだけど、満腹になる感じはあまりしない。これが僕にとっての食事なんだな…。チューブが透明で、内容物が通ってるのが見えるのも、なんかすごく嫌だった。30分ぐらいかかってやっと栄養剤の注入は終わり、看護師さんは病室から出て行った。
僕の身体はどうしてこんなにも不自由なんだろう。歩くことも禁止されて、いつからか左手もうまく動かなくなって…。この間までは排泄すら自分で出来なかったし、やっとトイレに行けるようになったと思ったら、今度はごはんが食べられなくなってしまった。自分が惨めで情けなくて、僕は涙が止まらなかった。
そこに、テヒョンがやってきた。鼻にチューブを付けて泣いている僕を見て、ちょっとびっくりしたみたい…。
「ヒッ…ヒック…テヒョン〜。ぼ、ぼく…(泣)」
「うんうん…鼻にチューブ、挿れられちゃったんだね…?」
「こ、ここから…栄養入れるんだって。もうごはん食べられないんだよ…嫌すぎる…(泣)」
「そっかそっか…。今はジミナ身体が弱ってるけど、きっとまたすぐ食べられるようになるよ!大丈夫だよ。ジミナ〜元気だしてよ〜。」
テヒョンが僕を抱きしめて、背中をさすってくれた。一生懸命慰めようとしてくれてるのが分かる。
「ジミナ、ずっと1人で泣いてたの?チューブ挿れるの、痛かった?」
「うん…挿れるのもめちゃくちゃ痛かったし、今も痛いし、ずっとなんか詰まってるみたいな…気持ち悪い感じがする…(泣)」
「そっかぁ。辛かったねぇ。チューブ、嫌だよね…」
「……(泣)」
「ねぇジミナ、気分転換にお散歩に行くのはどう?ジミナの好きな雑誌、新しいのが出てるかもよ?」
「う…うん。今日はごめん…やめとく……(泣)」
テヒョンは誘ってくれたけれど、大好きだったお散歩にも、もう行く気がしなくなっていた。病室の外には色んな人がいるし、売店や中庭には外来の患者さんもお見舞いの人もいる。鼻チューブを付けた姿なんて、絶対誰にも見られたくなかった。
「テヒョンごめんね、せっかく来てくれたのに…。僕、なんか眠くなってきちゃったから…ちょっと休むね…。」
「分かったよ〜ジミナ疲れたんだね。僕がずっとそばにいてあげるから、ゆっくり休みな〜」
テヒョンはそう言うと、僕の身体に布団をかけ、上から優しくトントンしてくれた。
僕は少しだけ安心して、目を閉じた。次の食事の時間が、気が重い。もう、何も、考えたくなかった…。