テヒョンside
病室に行くと、ジミナが泣いていた。
あ、鼻チューブ…とうとう挿れたんだ…。
本当はすごくショックだったけれど、ジミナに悟られないように平静を装う。
僕はジミナを守る為に、強くならなきゃいけない。
ジミナが泣き疲れて寝てしまったので横に座っていると、ジン先生が病室にやってきた。
「ジミナ、寝てるんだね。様子、どうだったかな?管の挿入がすごく苦しそうだったから気になって…。」
「ずっと泣いてた…。散歩にも誘ったけど、行かないって。」
「そっか。そうだよね…。ジミナはさ、僕たちの前では我慢しちゃうだろ?テヒョン、好きなだけ、泣かせてあげてね…。」
「うん……ねぇジン先生、ジミナは…ずっと…このままなのかなぁ?(泣)」
「そんなことないよ。心臓と身体がもう少し回復すれば、きっとまた口から食べられるようになる。今はジミナもテヒョンも苦しいよね。でも、これはずっと続く訳じゃない。退院だってできるよ。テヒョンも、ジミナのことを信じて支えてあげてね。」
「うん。先生ありがとう…。あ、それから…もうすぐ面会時間終わるけど、夕食の時間までいてもいいかな?ジミナ不安だと思うから、注入の時そばにいてあげたいんだ。」
「勿論いいよ。付いててあげて。」
夕食の時間になり、看護師さんが栄養剤を持ってきた。寝ているジミナを起こす。
「ジミナ、起きて〜。栄養剤注入するってよ」
「う…うーん」
看護師さんがベッドを起こし、ジミナの鼻チューブに栄養剤を繋ぎ、注入をしていく。
ジミナは泣きそうな顔で下を向いて、唇を噛んでいた。透明のチューブの中を、栄養剤が通っていくのが見える。僕はぼんやりとそれを眺めながら、ジミナの手をさすっていた。
注入が終わると看護師さんは病室を出て行った。
「ジミナー大丈夫だった?お腹いっぱいになった感じ、するの?」
「うんー。あんまり…よくわかんない…(泣)」
ジミナの目から涙がこぼれてくる。
「テ、テヒョン…ぼく、どうしよう…こんな、ごはんまで、食べれなくなっちゃって…」
僕は内心、ジミナの不安が痛い程分かった。ジミナ、僕だっておんなじ気持ちだよ…。だけど僕は、ジミナの為に強くなりたかった。僕は震えるジミナを抱きしめた。
「ジミナ〜大丈夫だよ。鼻チューブ嫌だよね…。少しの間我慢して、身体に栄養沢山もらって体力付けようね〜。」
僕はジミナを宥めるように、そして自分自身にも言い聞かせるように、「大丈夫大丈夫」とおまじないのように唱えながら、ずっとずっと、ジミナの背中をさすっていた。
その日僕は家に帰ったけれど、ごはんが喉を通らなかった。少し前に入院食を食べながら、オンマのごはんが食べたいなぁと呟いていたジミナを思い出す。今はその入院食さえ食べられなくなってしまったジミナがかわいそうで、僕だけがオンマのごはんを食べることが裏切りのように感じられて…。
オンマには悪かったけど、お腹が空いていないと誤魔化して、部屋に籠った。二段ベッドの上に寝転び1人になった瞬間、張り詰めていた糸が切れて涙が溢れ出てくる。僕は涙を拭うこともせず、ただただ泣き続けた。
二段ベッドの下の段はジミナの場所で、最近はずっと空いたままだ。ジミナがいる時は、いつ発作がきても気付けるように、夜中でも気を張っていたんだけどな…。
幼い頃からいつも、ジミナが入院して二段ベッドの下が空く度に、僕の心はぽっかり穴が空いたみたいだった。もしジミナが帰って来なかったらどうしよう。いつだって僕は不安だったんだ。
もしも…もしもジミナがずっと戻ってこなかったら…。ジン先生はああ言ってくれたけど、悪い考えばかりが浮かんでくる。
ジミナも今頃病室で泣いているだろうか。ジミナ、早く、帰って来てよ…。僕は、寂しくて寂しくて、堪らなかった。
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