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『Nobody gonna take my girl I’m gonna keep her to the end! Nobody gonna have my girl She stays close on every bend! Oooh she’s a killing machineShe’s got everything!!』
サファイアーズの演奏は2番まで進行していた。
葛城は久太郎と房子を連れて、観客席最前列へと案内しながら自分のスマホを確認した。
姫子からのその後の返信はなく、電話をかけても繋がらなかった。
金馬は駐車場に車を停めた後、たこ焼き屋の近くでライブの光景と松平親子の様子を伺っていた。
白熱するロックンロールライブに興奮したたこ焼き屋の兄ちゃんは叫んでいる。
「ワオ! イェーイ!」
金馬はそれを一瞥し、松平親子に目をやった。
さっきまでイビキをかいて寝ていた久太郎はぴょんぴょん飛び跳ねている。
葛城は、隣の房子に何やら耳うちをしていた。
金馬はため息をついた。
正直この様なノリは得意ではなく、出来る事なら早々に切り上げたいと思っていた。
一方で、久太郎は若かりし時代に戻っていた。
フォークランド紛争で取りやめになったイギリス留学や、甘い甘い恋愛の思い出が頭の中を駆け巡る。
今、目にしているhighway starを初めて聞いた時の胸の高鳴りは、長い年月が経過してもあの頃と変わりなく、ジャパンコンサートを一緒に見に行った現在の妻との初キスの感触までもが、ぬらぬらと脳内に漂い始めていた。
房子は、葛城からのサプライズプレゼントの到着を待ちわびていた。
『目黒のさんま』
を、食べさせてくれるのだと耳うちしてくれたのだ。
乙女の秘めた胸のうち、太平洋と日本海を泳ぐ真っ黒に焼けた美味しそうなさんまの大群。
房子もぴょんぴょん飛び跳ねた。
葛城は。
『たっぷりやって!』
と、書き記したスケッチブックをリトルに掲げた。
リトルは親指を立てて叫んだ。
キーボードソロに突入すると同時に、上空をヘリコプターが通り過ぎた。