(店員がウィスキーを運んできた。白髪頭は満足そうに飲む。黒髪はテーブルの上に散らばる紙ナプキンを見つめている。俺もここでペンを置く。マティーニを味わうことにする。おおっ、彼らがまた話し始めた)
ああまた一つ、めんどうなこと思いついちゃいました。
面倒でも何でも、向き合う必要があるよ。
ええ、わかってます。お話します。「真実の三角形」は発想ですから、「発想」は全て4次元の世界に属するわけです。
そうだね。
ビジョンとか思考とかスピリットとか、同じことを指してるなら言葉は何でもいいですけど、じゃあ「東京スカイツリーのビジョン」も「真実の三角形」と同じ4次元にあるはずですよね。
だね。
ところで、私達の「真実の定義」とは「永遠に変わらなくて普遍的なもの」でした。
変わりない。
でも、そうなると「スカイツリーのビジョン」って、真実ですか。
どういうこと?
もし真実なら、過去、現在、未来のどこにも存在するはずですよ。スカイツリーの発想がいつ創られたかは、知りません。例えば、仮に平成10年だったとしましょう。じゃあ平成10年より前に、「スカイツリーのビジョン」は存在しますか? 例えば、縄文時代にも存在しますか?
……「三角形」は2次元で、「スカイツリー」は3次元だからっていう可能性はないかな。
「三角柱」は立体で3次元ですけど、永遠で普遍的です。
(初老の男は腕を組んだ)
「スカイツリー」がもし普遍的だったら、地理的にも、ここだけじゃなくて津和野でも国後島でもマルセイユでもニューデリーでも、火星でも宇宙の中心でも果てでも同時に存在できるはずです。
(男はハンカチを取り出して、額の上からぱたぱた押した)
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