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「どうしてこんなことを?」 1人の刑事が私に聞いた。
私は無言のまま俯いた。答えるつもりなど無かった。
「なんとか言わんかコラァ!」
彼の隣に座る刑事が声を張り上げた。取調室に彼の声が反響する。
「ちょっと落ち着いて、岩田さん」
岩田と呼ばれた刑事は呆れたようにため息をつき、言った。「お前は甘いんだよ立川」
どうやらもう一方の刑事は立川というらしい。
岩田刑事は大きくため息をつき、机に肘を着いて身を乗り出してきた。
「どうやらここが足りてないようだな」
彼はそう言うと人差し指で自身の頭をトントンと突ついた。それでも私は動じなかった。挑発に乗る気力も無かった。
今度は立川刑事がこう訊いてきた。
「…では質問を変えます。あなたの罪は、なんだと思いますか?」
この質問にはすぐに答えた。
「生まれてきたことが罪だったんでしょ」
すると今度は岩田刑事が口を開いた。
「だから、具体的にどんな事が罪だって聞いてんだよ」
くどいな、と若干苛立ちを覚える。
「分からないって言ってるでしょう」
「分からないじゃねぇんだよ。こっちとしてもな、地獄行きの者は出したくねえんだ。お前だって天国に行きたいだろ」
「別に」私は即答した。
「それよりそういう態度どうなんです?死んだばかりの人間に」
私が言うと、岩田刑事は「はあ?」と眉をひそめた。
「だいたい、自ら死を選ぶことがどうして悪になるんです」私は続けてそう言い、「酷い話だ」と吐き捨てる。
「だから動機次第だっつってんだろ。お前のせいで何人迷惑したと思ってる」
「電車の事ですか?」
「そうだ」
「そんなの知りません。私には関係ないので」
私がキッパリ言うと、岩田刑事は顔を歪めた。「お前な!」岩田刑事が声を上げたところで、立川刑事が口を開いた。 「岩田さん」
彼は首を横に振った。その動作を見て、岩田刑事はチッと舌打ちをし、黙り込む。
「何も話す気がないようなので、今日のところは終わりです。ですがひとつだけ言いたい」立川刑事はまっすぐ私を見て言った。
「生まれてくることが罪なら、天国なんてもの、ありませんよ」
私は彼の言葉を、慰めなどと都合よくは受け取れなかった。