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59 ◇後悔先に立たず
その後、堀内から交際を断られたまほりけは意気消沈していたが、じっとして
いられずに翌日思い切って結婚相談所へ足を向た。
受付に座っていた山本百合子がまほりの応対をしてくれた。
「あ、こんにちは。この度は残念なことになって、なんて言えばいいか……」
「山本さん、その件でちょっとご相談がありまして来ました」
「じゃあ、あちらの席でお話を伺いましょうか」
「こんなことをお聞きするのも今更だとは思うのですが……」
「いいですよ。何なりと気になっていることはお聞きください」
「こちらで成婚された方たちの何割が、その……身辺調査などやられて
いるのでしょうか?」
「そうですね、こちらでの入会審査はあくまで自己申告に基づいているため、
特に中高年層の再婚の場合などは、多いようですね。
安心を得るために、親御さんが調査されることが多いかもしれません。
勿論、全員ではないと思います」
「最初に交際の申し入れをしてくださった鍋本さんは、現在どうされてますか?」
「鍋本さんですか……。確か、お話の進んでいる方がいらっしゃったかと。
お待ちください。お調べしてみますね」
今回の相談所への訪問は、今更ながら恥ずかしい話ではあるけれど、もし今、
鍋本がフリーなら遅まきながら彼からの申し入れを受けてみたいと思っての
訪問だった。
彼も堀内と同じように興信所を使うだろうか。
心配はつきないけれど、使うと100%決まっているわけではないから
堀内の時のようになるとは限らない。
それに臨みをかけて、まほりは再度婚活をチャレンジしたいと考えたのだ。
後悔はしたくない。
少しでも望みがあるのなら、それに賭けたい、縋りたいと思った。
◇山本百合子(結婚相談所スタッフ)
水島まほりは堀内貴史と成婚間近で破談になった会員だ。
すぐさまそういう関係ではないとスタッフに申し立てしてきた水島まほりだったが、
その一点張りで今はもうその相手の男性と付き合ってはいないという言質がとれて
おらず、山本もこの点が非常に懸念点として記憶に残っている。
知らないならともかくも、水島まほりに親密にしている男性がいて、そのせいで
水島は堀内氏から破談されている。
いくらなんでも、何も知らずにいる鍋本に再度の紹介、そして成婚への誘導は
気が引けるというもの。
そして現在も、鍋本に成婚に向けての相手がいないというのならともかく、
あれから鍋本にも上手くカップリングした相手がいる。
なので、再度水島まほりをプッシュするのは混乱をまねき、下手をするとこの
相談所に傷をつけることになりかねないとの判断もある。
だが、鍋本氏の判断を仰がず、彼が好意を持っていた女性との縁を黙って
潰してもいいものだろうか、など、さまざまに思い悩む山本なのだった。
水島に「お待ちください。お調べしてみますね」と言いおき、探している体で
考えていたのは、そのようなことだった。
何としてでも、結婚相手を見つけたいという彼女の心境も分かるだけに、
山本はどうしたものかと頭を悩ませた。