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🖤「よし!お風呂入る!」
💚「え、もう?ちょっとお腹休めたら?」
わんぱくモードのめめは言う事を聞かない。でもはしゃいでいるのが嬉しくて一緒に露天風呂に向かう。
🖤「阿部ちゃん、せーので見よう、下向いて入ろう」
💚「ふふふ、いいよ」
熱いお湯に浸かり、肩をくっつけて『せーの』で空を見上げた。
すぐに言葉は出なかった。
もはやどれが星座かもわからないくらい、空いっぱいに散らばり煌めく星。
その一つ一つがなんだかとても近く感じて、手を伸ばせば届きそうな感覚すらおぼえる。
じっとしていると、星が降ってきているようにも見えてくる。
満天の星空と、それに包まれる俺たち2人だけの世界。ネットで調べていた時に見た写真より、ずっと儚くて美しい。
💚「すごい」
俺の言葉だけが夜空に吸い込まれる。
めめをちらっと見ると、言葉もなくただ空を見ていた。
さっきまで子どもみたいだっためめの、綺麗な横顔にドキッとする。
めめの感動を邪魔しないでおこうと俺も再び空を眺め、2人の間にしばらく静寂が訪れた。
どれくらい経っただろう。
お湯がゆらりと動いて、めめが手を握ってきた。
流れるように指を絡める。
🖤「阿部ちゃん」
💚「うん?」
🖤「ありがとう。俺、本当に来て良かった」
💚「嬉しい」
めめの声は少し掠れている。そっと顔を見ると、さっきと変わらない綺麗な横顔には涙が伝っていた。
それからはまたしばらくの静寂。
綺麗なんて言葉では足りなくて、語彙力のない自分が憎らしい反面、この景色はああだこうだと口で評価するものでもないとも思う。
露天風呂の湯気も呼吸もどんどん闇に吸い込まれていき、見ているほどに自分たちもこの夜空に溶け込んでいく感覚に時間を忘れて身を任せた。