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「…諒真?」
 「…俺のこと心配してくれるのは嬉しいですけど、俺以外の人を頼って欲しくないです」
 そう言って諒真は俺を抱きしめる力を強くした。
 「すみません。付き合ってもないのにこんなこと言って」
 「いや…いいよ。俺も諒真がそう言ってくれるのは嬉しいし…」
 俺がそう言うと、諒真はクスッと笑って抱きしめるのをやめ、俺の顔を見る。
 「瞬さんって、たまに素直になるんですね。ほんと可愛い」
 そう言って諒真は俺の頭をそっと撫でた。
 「うるさい…いいから早く食べて」
 「俺の血飲んでくれます?」
 「うん、飲むから。その代わりちゃんと栄養取ってね」
 「はい。たくさん食べます」
 諒真はニコッと笑ったあと、席に戻った。
俺の料理を平らげた諒真は、ソファーでくつろいでいた俺の元へ来る。
 「ごちそうさまでした。今日も美味しかったです」
 「ん、ありがとう」
 「次は瞬さんの番です。ちゃんと栄養取りましたから、遠慮せずに飲んでくださいね?」
 「わかったよ」
 俺がそう言うと、諒真は俺の横に座り、首元を出す。
その首元を見て、俺は不安になる。俺の噛み跡が付いているのはいつも通りなのだが、その噛み跡が少し濃い。
 (もしかして昨日…)
 「ねぇ諒真、昨日俺が血飲んだ時、もしかして俺噛むの強かった?」
 「あぁ…まぁ、ちょっと」
 たしかに昨日は、上手く吸えなかった気もする。酔ってたから分からないけど。
諒真はちょっとって言ってるけど、こんなに濃く残っているし、結構痛かったと思う。
 「…ごめん、痛かったよね」
 「全然大丈夫です。昨日は可愛い瞬さんいっぱい見れたんで」
 そう言って諒真は嬉しそうに笑った。
 「まぁ、昨日のことはいいですから。とりあえず飲んでください」
 「うん、ありがとう」
 俺はそういった後、諒真の首元に噛み付いた。そのまま血を飲む俺の頭を諒真はそっと撫でた。
俺が口を離すと、諒真は俺をみてニコニコしながら言う。
 「ねぇ瞬さん。昨日みたいに一緒に寝ません?」
 そう言われて、俺の体は熱くなり、俺は慌てて言う。
 「バカ!寝ねぇわ!」
 「じゃあお風呂一緒に入ります?」
 「入らねぇよ!」
 俺がそう言うと、諒真はクスッと笑う。
 「冗談です。瞬さんの反応が見たかっただけです」
 そう言って諒真は満足そうに風呂場へ歩いていった。
1人残された俺は、さっきの諒真の言葉を思い出し、顔が熱くなるのだった。
次の日。朝食を作っていると諒真が起きてくる。
 「おはようございます」
 「おはよう」
 「もう体調は大丈夫そうですか?」
 「うん。すっかり元気だよ。ありがとう」
 「よかったです。でも、今日はあんまり無理しないでくださいね?」
 「わかったよ」
 俺がそう言うと、諒真はニコッと笑った。
その後出勤して、土岐さんの元へ向かう。
 「土岐さん、二日連続で迷惑かけちゃってすみません」
 俺がそう言うと、土岐さんは笑顔で言う。
 「全然いいですよ。昨日そんなに忙しくなかったですし。逆に俺が休んだ時はお願いしますね!」
 「はい。任せてください」
 そしてその後、いつも通り働き家に帰った。
家に帰り居間に行くと、諒真がニコニコの笑顔で言う。
 「おかえりなさい!」
 「ん、ただいま。なんかあった?」
 「え?なんでですか?」
 「いや、なんか嬉しそうだから」
 「あー、分かっちゃいます?」
 そう言って諒真はニヤニヤしている。そんな諒真を不思議に思い、俺は聞く。
 「なに、どうしたの」
 「いや〜、瞬さんとのデートプランを考えてたんですよ」
 俺はその言葉で頭にハテナが浮かぶ。
 「え?今なんて」
 「だから、瞬さんとのデートプランを…」
 「ちょっちょっ、ストップ」
 「なんです?」
 「いやいや。なに、デートって」
 「え〜?瞬さんがデートに誘ってくれたんですよ?」
 「いや誘ってないよ!いつの話?」
 「ほら、一昨日ですよ。俺に言ってきたじゃないですか。あんな甘えた声で、俺の事じっと見て」
 俺は一昨日のことを思い出す。そうだ。居酒屋に迎えに来てもらって家に帰った後、俺は確かに言った。
 ″ りょ〜ま、デート…して…″
 最悪だ。お酒なんて飲まなければよかった。
 「あれは…」
 「″酔ってたから″はなしですよ」
 言おうとしていた事を言われて俺は何も言えなくなる。
 「大人しく俺とデートしてください」
 「わかったよ。しょうがないな」
 俺がそう言うと諒真はふふっと笑う。
 「ありがとうございます」
 「うん…それで、どこ行くの?」
 「今色々調べてたんですよ。遊園地とか水族館とか。一緒に考えましょ?」
 そう言って諒真は自分が座るソファーの隣をトントンと叩いた。
俺はそんな諒真をみて、隣に座る。
 「ほら、色々ありますよ」
 そう言って諒真は身体を近づけ、携帯を見せてくる。
俺も何となく体を近づけ、携帯を見た。
俺は距離が近いのと実は結構楽しみでドキドキしながら諒真と行き先を決めるのだった。
デート日は明明後日の水曜日。俺も休みだし、諒真も授業が10時半で終わるらしく、この日に決めた。行く場所は遊園地だ。
そして当日、俺は諒真を玄関から送り出す。
 「早く帰ってきますね。いってきます」
 「うん。気をつけて。いってらっしゃい」
 俺がそう言うと、諒真はニコッと笑って外に出る。ドアがバタンと閉まった後、俺はふーっと息を吐いた。
 (準備しよっ)
 俺は自分の部屋のクローゼットから服を取り出す。昨日バイト帰りに新調した服だ。
服を着替え、家を出る。向かった先は美容院だ。
 (普段はしない髪型にして、諒真を驚かせる!)
 そして美容院に入ってしばらくし、セットが終わる。
完成した髪型は波打ちポンパドールだ。鏡を見て、俺は心の中で決めポーズをした。
家に帰ると、ソファーに座る。今の時刻は10時。諒真が返ってくるのは11時前。
 (あと1時間か…結構あるな)
 そう思ったけど、意外と1時間は早かった。ソファーでくつろいでいると、玄関が開く音がする。諒真が帰ってきたのだ。
そしてこちらへ歩いてくる音が聞こえた後、後ろの扉が開く音がする。
 「瞬さん、お待たせしました」
 その声を聞いて、俺は立ち上がり、諒真の方へ体を向ける。俺を見た諒真は口を開けたまま、そこで固まった。
そんな諒真に俺は近づく。
 「どうだ。新しい俺は」
 そうドヤ顔で言うが、諒真は口を開けたまま何も言わない。
 (あれ…もしかして、好みじゃなかったかな…)
 そう不安になった俺はなんだか申し訳なくなる。
 「あ…ごめん…なんか調子乗ったかも。あの、直してくるから…」
 「ダメです」
 諒真はさっきの無言が嘘かのように、素早くそう答えた。