あの日から数日。
雪が降らなくなり、外は暖かくなってきた。
当然、半袖で過ごしていたサブローは風邪を引き
この数日間ずっと家で休んでいた。
そういえば、ハックにパーカー返してなかったな…
きっと怒っているだろうと思いながら
母親に洗濯をしてもらった良い匂いのするパーカーを紙袋に入れて部室へと足を運んだ。
「僕、降臨」
「なんだち〇こか」
「ち〇こじゃない、レクイエムだっ!」
部室にいたキリンは当然のように卑猥なあだ名で呼び、挨拶をする。そしていつものような下りになる。
「…というか、お前ら何やってたんだ?」
「んー?タブーとポッキーゲーム」
ニヤッとしながらそう言うと
「ギャパパ!ポッキー美味かったぜ!」
と、なんの恥じらいもなく返してくる。
「お前もハックとやったらどうだ〜?」
キリンがポッキーの箱を渡し、またニヤニヤしながらそう言ってくる。
「だ、だから僕達はそういう関係じゃない!」
顔を赤くして否定した。
「そういえば、肝心のハックが見当たらないが…」
「そこで寝てるぞー」
指を指す方向に目を向けると、ソファーで横になって寝ているハックの姿が見つかった。
暖かそうにすやすやと。
少し近寄ってみると小さい寝息を立てながら寝ているハックの姿を間近で見ることが出来た。
そんなハックの姿に思わず見とれてしまった。
「…あ、タブー!俺ん家来いよ!」
「ギャパパ!いいぜ、俺様が掃除してやる!」
タブーの肩をポンポンしながらそう言うと、タブーも察したのか二人ともにやにやしながら部室を出ていってしまった。
部室には、二人だけの空気が漂っていた。
「…ハック」
「お前ともっと、仲良くなりたい」
ハックの顔を見ていると思わず本音が出てしまっていた。
そして頭を撫でる
「親友に…なりたいな」
目をうとうとさせながらそうつぶやく。
「僕の事……もっと…」
何かを言い欠けるが、眠気に耐えきれずハックのそばで眠ってしまった。
パチッ
「はっ」
目を離すと、ヤルミナティーの部室にいた。
前の記憶をゆっくりと思い出す。
いつの間にかエデンの魔力によって眠らされてしまったな…
「あれっ、ハックは!?」
周りを確認するが姿が見当たらなかった
「ここっすよ」
「うわああっ!!!」
背後から驚かしてきた。
思わずびっくりして声を出してしまった。
「驚きすぎっすよ」
「す、すまない」
「あっ、パーカー」
本来の目的をやっと思い出し、紙袋からパーカーを取り出す。
「その…あ、あり…ありが……」
「ちゃんと言ってくださいっす」
「…あ、ありがとう」
そう言って渡されたパーカーを受け取り、早速着る
「あ、ちゃんと洗ったからな」
「ママにっすか?」
「ちっ、違う!!」
図星である
フードを被ると、自然と笑顔になっていた。
「…なぁ、なんでそんなマヌケなパーカー着ているんだ?」
「大きなお世話っす!」
「そういうところっすよ、仲良く出来ないのは……」
「え?」
「あ、いや、なんでもないっす」
口が滑ったのか、目を逸らして話を終わらした。
「…まぁ、安心するからっすかね」
「へぇ…」
さっきのパーカーを着ている質問に答えると
サブローは少しパーカーに羨ましさを感じていた。
「サブローくんは、安心することってあるんすか?」
そう質問を返してみる。
するとサブローは目を逸らして言った。
「……僕は、ハックと一緒に居ることで安心する」
そう言うと、ハックは
「…なんすかそれ、気持ち悪いっすよ…!」
と少し引き気味で言った。
「……すまない」
だけど、それはサブローに結構効いてしまっていたようで少し辛そうに見えた。
その様子にハックは気づいた。
「…ちょっと言いすぎたっすね」
少し罪悪感が湧いたのか、サブローの頭を撫でて少し慰めた。
するとサブローは何も言わずに撫でられるのを受けた
心做しか、最近ハックが僕に対して優しい気がする
撫でられながらそう考えていた。
「僕はなんで、みんなと仲良くできないのだろうか」
「それは普通に厨二病だからっす」
「直球だな!?」
ハックのどストレートの言葉に心に突き刺さった。
「でも、最初の頃よりキリンさんとタブーさんと仲良いじゃないっすか」
「…そうか?」
「俺はそう思うっすけど」
続けて頭を撫でてそう言う。
「じゃあ、ハックも親友だよな!!」
「いやなんでそうなるっすか」
完全なるボケにハックはツッコミを入れていく。
「…サブローくんに対してのステータスは」
「同じ学部の…友」
「いや、知り合いっすね」
「はぁー……」
大きくため息をついた。
すると撫でるのをやめてこういう。
「俺はサブローくんの事、親友だと思わないっすから」
「ひ、酷いぞっ…」
「うわああん」
そう言って泣きながら部室を去っていった。
「親友じゃなくて、友達だったら…」
「いや無理っすね。サブローくんの事友達だと思いたくないっす」
相変わらず酷いことを言った。
「それにしても、今日はやけに素直だったっすね」
素直にならなきゃいけないのは、俺の方なのに
そう思いながら、ノートパソコンを開いた。
コメント
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ハックくんが頭を撫でてくれるような気がして、とっても幸せです(///ω///)♡ あなたは、誰かに頭を撫でてもらうとき、どんな気持ちになりますか?