第4話 「世界の碧律」
🚀 シーン1:休息とニュース
暗闇の中、荒れたビルの一室に青白い光が浮かんでいた。
ゼイン——いや、然(ぜん)は床に座り込んで、碧族専用のスマホを手にしていた。
「ったく……この数日で人生変わりすぎだろ……」
天井を見上げながらぼやく。
ついこの間まで普通の人間だったのに、気づけば碧族。
ヴェール・バインドに追われ、見知らぬ力を手にしていた。
「……おい、ゼイン」
不意に声をかけられ、然は視線を向けた。
ナヴィスがテーブルに腰かけ、手には小型のタブレットを持っている。
黒のジャケットをラフに羽織り、くせ毛の黒髪をかき上げる。
「まだ“ゼイン”じゃねえ」
然はムッとしながら返すが、ナヴィスは気にした様子もなく、タブレットの画面を見せた。
「それより、これ見ろよ。ニュースだ」
画面には中国政府の公式会見の映像が流れていた。
背広を着た政府関係者が、記者会見の壇上で静かに言葉を紡ぐ。
「碧族の反乱? 馬鹿げた話だ。我々は碧族を完全に管理している。問題など存在しない」
その発言に、会場の記者たちがざわめいた。
「ですが、中国の一部地域では未確認の碧族の逃亡が……」
「そのような事実はない。我々の管理下にある限り、碧族の反乱は起こり得ない」
然は画面を見つめ、無意識に眉をひそめた。
「……マジかよ。これ、嘘だろ?」
「そりゃそうだろ。中国が碧族をガンガン軍事利用してるのは有名な話だ」
ナヴィスはタブレットを放り投げるように置き、深くため息をついた。
「“碧族の反乱はありえない”ってか……いやいや、そんなわけあるかよ」
然は無言のまま、画面を見つめ続けた。
政府の冷たい言葉とは裏腹に、画面の端には拘束された碧族の映像が一瞬映っていた。
🚀 シーン2:次の動き
「……なあ、ナヴィス」
「ん?」
然はゆっくりとタブレットを指差しながら言った。
「中国の碧族……もし、本当に反乱しようとしたら、どうなると思う?」
ナヴィスは少し考え込み、肩をすくめた。
「無理だな。あの国は鉄壁の管理体制を敷いてる」
「でも、もし反乱が起こったら……」
「そんときは、俺たちが出るんだろ?」
ナヴィスはニヤリと笑った。
「ま、今はそんな余裕ねぇけどな。まずはお前が生き延びることを考えろよ、ゼイン」
「……だからまだゼインじゃねえっての」
然はため息をつきながらも、ナヴィスの言葉に納得していた。
今はまだ、自分のことだけで精一杯だ。
「じゃあ、次は何をすればいい?」
ナヴィスはソファに寝転び、軽く手を挙げた。
「決まってんだろ。お前のフラクタルをもっと使いこなせるようにすることだ」
然は自分の腕を見つめる。
碧族になってから手に入れた力《オーバーライド》。
まだ完璧には使えないが、確実に自分を守る力になる。
「……分かった。やるよ」
ナヴィスは満足そうに笑った。
「よし、それでこそ“ゼイン”だ」
然は無言で拳を握りしめた。
——まだ、“ゼイン”にはなっていない。
でも、何かが少しずつ動き始めている。
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