テラーノベル
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ある夏の日の、何気ない日だった。
「……瑠衣!」
いつもの声が、切羽詰まったように俺を呼んだ。振り返ろうとしたら押されて、尾骶骨に痛みを覚える。と、同時に、1発の爆発音が聞こえて、目の前にじわじわと赤色の花が咲いていく。思考が停止して、動くことが出来ない。これは、なんなんだろう。何かの夢か?それとも、……、、、現実……??
「じ…ん、……?」
気づけば口から漏れていた。声帯が震えて、上手く声が出ずに、掠れる。震える手を伸ばせば、冷たくなった手に握られた。血塗れの、左手……。顔を見るのが怖くて、俯いて居た。けど、どんどん冷えていく手に恐怖を覚えて、顔が見たくなって、あげてしまう。何も言えない。左目から出血した、仁の姿。怯えてか、恐怖か、絶望か、後悔か、謝罪か、分からないが、何かが原因で涙を流す俺に、仁は優しく微笑んで、それからこちらに持たれかかってきた。ドクドクと血が地面に、服に染み込んでいく。生暖かい血と相反するように、仁の体はどんどん冷えていく。おっさんや、ナイトアウルの皇千ト、スワロウテイルの恵美まどかが駆けつけて一気に物事が進んでいく。俺は暫く放心状態で、ほとんどの記憶がなかった。
それから、1年が経過した。仁の左目は視力を失い、右目だけに千里眼が宿っている。事件の解決も、日常生活も、支障はない。ただ、時折、左目が痛むらしい。苦痛に顔を歪めることがある。……唯一の千里眼は、片目とは言え、帰らぬものとなってしまった。
ある夏の日の、何気ない日だった。
コメント
1件
最高です、推しが可哀想みたいな感じのがめっちゃ好きです、✨️💕