間に合った。
学校に着いたのはいつもより10分遅い八時十分。
急いで靴箱を開けて画鋲を拾い集め、階段を駆け上がり、教室のドアを開ける。
いつものように黒板に書かれている悪口を綺麗に消す。
しかし、ここまでで15分かかってしまったので、残り5分で机の上の落書きを消すのは難しいと考え、仕方なく席につき、本を読むことにした。
本を読んでいると、
「今日こそ屋上な」
と言われ、俺は絶望した。
思い出してしまった。
あの日、行かなかった。いや、行けなかったことを。
ああ、きっと、今日死ぬんだ。
“死ぬ”というより、“殺される”と言った方がいいのかもしれない。
その日の授業は、青のことばかり考えていた。小さい頃のこと。
母さんと父さんがいなくなったときのこと。
二人で頑張ってきたこと。
喧嘩したこと。
笑い合ったこと。
まだ死ぬと決まったわけではないのに、思い出が次々と出てくる。
今ならわかるよ、母さん。俺にとって青が本当に大切なモノであることが。
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