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「おぉう……」


思わず声を漏らすと、「どこの国出身だよ」と突っ込まれた。


「あーあ、もう……。私がまた美奈歩に睨まれるんだからね」


諦めて溜め息をついた私は、スマホで母に連絡を入れる。


「言っておくけど! 変な真似しようとしたら、降りて一人で帰るからね。さっきあんたが言った事も家族にバラす」


「……分かってるよ。ちょっと継妹と出かけたいって思っただけだろ。なんで犯罪者扱いされないといけないんだよ」


「キモいから」


「……キモいって言うなよ。シンプルに傷付く」


「シンプルに気持ち悪い」


言い返すと、亮平は「はー……」と溜め息をついた。


「……俺、こんな反応をされるほど嫌な事をしたか? いじめた覚えはないし、できるだけ仲よくしようと思っていた。でもお前は一度も俺に心を開かなかっただろ」


私は溜め息をつき、亮平に向き合う覚悟を決めた。


「……人のせいにしたい訳じゃないけど、親が再婚する時、あんた達はすでに仲良し兄妹だったじゃない。美奈歩は亮平の事が大好きだし」


「確かに仲は悪くない。〝いい兄〟でいようと努力した結果だと思ってる」


「兄妹仲がいいのは結構だけど、もう二人は兄妹として〝完成〟されてる。だから外部から得体の知れない女が入ってきて、美奈歩は居心地のいい巣を守るために敵対心を持ったんじゃない?」


「巣って……、動物じゃないんだから」


亮平は呆れたように言う。


「人が人を嫌うのって、本能的な感情だと思うよ。見知らぬ人を家に上げたくないじゃない。物を盗むかもしれないし、傷つけられるかもしれない。もし私が男だったなら、美奈歩はもっと不安を抱いたかもしれない」


「だからって……。もう十年だぞ」


溜め息混じりに言う亮平は、美奈歩が私に向けてくる敵意を感じていないんだろう。


「亮平には分からないかもしれないけど、女だから女を嫌うんだよ。私はよく同性に嫌われるから、そういう視線や態度に敏感なの」


そう言った私は、あまり同性の友達に恵まれなかった人生を振り返る。


「女子って群れを作りたがるから、自分の敵にならないかを凄く気にする。平均的な人はうまくやっていけるかもしれない。でもちょっとでも目立つと〝異物〟扱いされるの」


私は助手席で脚を組み、溜め息をつく。


「自分で言いたくないけど、私、よく『美人』とか『胸が大きい』とか言われる。すぐに褒められる人って敵も作りやすいの。私にその気がなくても、『彼氏をとられるかもしれない』とか『色目を使った』って陰口叩かれる。これでも胸が目立たないように、下着や服にお金を掛けて努力してるのに、『体で誘惑してる。下品』とか、好き放題言われるの。……なんならこの脂肪くれてやるっつの」


吐き捨てるように言うと、女性の事情を知らなかったらしい亮平は「大変なんだな」と呟いた。


「勿論、全員がそうじゃない。こんな私に『仲良くしたい』って近づいてくれる子もいた。……でもその人たちに『やめときなよ』って囁く人がいる。私に味方が増えるのが嫌だから、一人でも多く自分たちの仲間にしたいの」


「なんでそこまで敵視されるんだよ。誰かの男をとったのか?」


「そんな事する訳ないでしょ」


私は悲鳴混じりに言ったあと溜め息をついた。


「……〝持てる者〟に見えるんじゃない? 『自分は努力しなきゃならないのに、あの人は楽してる』って決めつけられてる。私、これでもスキンケアやメイクの努力を怠ってないし、胸が大きい分、垂れないようにトレーニングを頑張ってる。……彼女たちはそういう努力を見てない。見たくないんだと思う。……ズルしてる〝悪い人〟でいてほしいから」


私はぞんざいに溜め息をつき、なんとはなしに前の車を見た。


「大抵の人って『美人やイケメンって性格悪いんでしょ?』って思うでしょ。なんでか知らないけど、それがワンセットなんだよ。『外見に恵まれてるなら、性格が悪くないと釣り合わない』『美人、イケメンで性格もいいなんて認めない』って。それで〝悪〟を作りだして、イライラした時に噂話をでっち上げて、叩きまくってストレス発散する。悪いものを正義感で叩いてる時って、めっちゃ気持ちいいから」


「……なんか、怨念籠もってるな」


どこか引いた口調で言われたので、ムカついてしまった。


「あんたは誰かに酷く嫌われた事がないんじゃない? 周囲に溶け込めてる人に、私の気持ちは分からないと思う」


中学生、高校生の時は、本当に理由もなく嫌われて陰口を叩かれまくった。


恵と昭人がいたからまだ耐えられたけど、できる事なら『やめてほしい』と言いたかった。


でも意地悪をする人は、私が反応すればするほど喜ぶ。


頭を下げて『仲間に入れて。もういじめないで』って言っても、そこから先、待っているのは奴隷生活だ。


だから私はなるべく休み時間は教室を出て、人のいない場所や図書室に逃げた。


「……美奈歩はそんなに朱里を嫌ってるか?」


(……こいつは本当に分かってないんだな)


ここまで伝わってないと思うと、溜め息しか出ない。

部長と私の秘め事

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