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渡辺と宮舘、向井の3人での買い物の帰り道…
路地を歩いていると…何やら路地裏から、子供の声が聞こえて来る
「?」
その声は、助けを求めている様で…俺達は慌てて声がした方に走り出した
「やだって!離せよ!」
見知らぬ男が、少年の上に馬乗りになっている…
少年は衣服を脱がされ、ぱっと見ただけで襲われているのだと想像がついた
真っ先に宮舘が動く…
男に飛び掛かり、少年から引き剥がす
「!」
宮舘によって引き剥がされた男が、こちらを向く…
その瞬間、渡辺の脳裏に、あの時の光景がフラッシュバックして蘇る
「しょっぴー?しょっぴー!」
息が上手く出来なくなり…ガクガクと足が震え立っていられない…
「何で今更…」
振り返ったその顔は、間違えようもなく…あの時の男のものだった
再び出会ってしまった悪魔の様な男は、今だに同じ過ちを繰り返しているらしかった
襲われた過去の自分が悲鳴を上げる…
辛くて、苦しくて…逃げたくても、足が言う事を聞かず動けない
「誰か…助けて…」
それだけ言って、蹲ってしまった渡辺を…隣に居た向井が慌てて支える
「………」
その顔は顔面蒼白で、今にも倒れそうな程…とても弱々しく辛そうに見えた
「もう気持ち悪く無い?」
向井に介抱してもらいながら、渡辺は病院の一室に居た
襲われた少年を念の為に病院に運ぶ際…
具合の悪くなった渡辺も一緒に、ここへ連れて来られて診察を受けた
「今、舘さんは警察に事情聞かれてる…」
俺が正気を失っている間に…
犯人を捕まえた、お手柄の宮舘は
関係者として、その時の状況を確認されているらしい
「あのさ、康二…」
これだけの失態をやらかしたのだ…もう黙っている事は出来ないと
着ていた服をギュッと握り締め…渡辺が、そう切り出した
「俺さ…あの男に、襲われた事あるんだよね…」
向井は突然の告白に耳を疑ってしまう
「まだJrになって間もない頃に、アイツに路地裏に連れ込まれて…。俺の時は叫んでも誰も助けてくれなかった…」
「………」
自分の体を守る様に抱えながら話す渡辺の姿に、口を挟めず言葉が出ない
「だから、俺の身体は汚れてるんだ…今でも、あの時の悪夢を見て飛び起きるし…一生忘れる事は出来ないかも知れない…」
そう言って言葉を詰まらせる渡辺の瞳から、一筋の涙が零れ落ちた…
「そんな事ない!しょっぴーは汚れてなんて絶対無い!」
そう言い切った向井の顔は、静かに怒りを湛え…初めて見る表情に渡辺は戸惑う
「俺がソコにおったら、絶対に助けたのに…。あかん…今アイツにまた会ったら、殴り掛かってしまいそうや…」
正気を失う寸前に、渡辺が発した【助けて…】の言葉の意味が、向井の心に重くのしかかる
「康二…」
「でも絶対、我慢する!今のしょっぴーに迷惑がかかる…」
俺達9人は同じグループに居る為、誰か1人が不祥事を起こせば…他のメンバーにも迷惑が掛かってしまう
「それに俺の軽率な行動で、しょっぴーの辛い過去が暴かれるのは絶対に嫌や…」
悔しそうに、そう呟いた向井の目にも涙が光る
「お前、全部俺の為じゃないか…」
過去の俺の為に怒ってくれて、今の俺の為にそれを隠して我慢する…
「何だよそれ…」
渡辺の目から涙が溢れ、止まらなくなる…
けれども、それは先程までとは違い…熱を持って温かい嬉し涙
「しょっぴー、泣かんといて」
向井が堪らなくなって、渡辺を抱き締める…しかし
「あっ、ごめん!しょっぴーは、触れられるのも嫌やったな…」
渡辺が【触れられるのは嫌い】という事を思い出し、声を上げる
慌てて離れようとする向井に、渡辺はそっと手を伸ばし…
「康二は良い…康二だけは、あの時から平気だった…」
それは酒を飲み過ぎて【寂しい…】と泣いてしまった、あの日の出来事
自分は酔って眠ってしまっていた為、向井から後で話で聞かされただけだったが…
今なら分かる…【寂しい】の気持ち…
「俺は良いんか?そんな事言うと、単純だから自惚れるで…?」
壊れ物を扱う様に、まるで真綿でくるむ様に…そっと身体を抱き寄せて、包み込む
「今日だけは…自惚れて。側に居て欲しいから…」
目を閉じて、寄り掛かって来る渡辺を
向井は全身で受け止めた