夜8時。ドンキで買ってきた冷食や日用品を片付けたあと、
俺はいつものようにソファでゲームをしてた。
「てかさ」
突然、後ろから声。
「どこに置いた?うちのメイクポーチ」
「え?知らないけど。自分で持って帰ってきたろ」
「ないから聞いてんだけど?」
「いやいや、そっちの袋持ってたの、お前だって」
そのとき、テーブルの下に置いてたビニール袋に、
小さめのピンクのポーチが埋もれてるのを見つけた。
「あったわ。これ?」
俺が手に取って渡そうとした瞬間。
「勝手に触んな」
バッと言葉が飛んできた。
振り返ると、るかの目がマジだった。
笑ってない。眉も寄ってる。
(…地雷、踏んだ)
「……悪い」
ポーチをそっとテーブルに置く。
「つーか、女の持ち物に平気で触るとか、無神経すぎ」
「いや、落とし物だと思って…」
「言い訳いらないし」
そのまま、るかはポーチを奪うように手に取って、
自分の部屋に引っ込んでいった。
⸻
風呂に入ったあと、
なんとなく罪悪感が残ってて、
俺は冷蔵庫からプリンを二つ取り出した。
そのうちのひとつを、るかの部屋の前に置く。
ノックも何もせず、ただ置くだけ。
リビングに戻ってゲームを再開した頃、
キッチンのあたりで、スプーンの小さな音がした。
(……食ってんじゃん)
それだけで少しだけ安心した自分が、
なんかよくわかんなくて、鼻で笑った。
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