テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
華
219
113
#下手くそ注意
らむね𐙚
122
#オリジナル
ゆいらーめん
512
第9話「空いた席」
───学校の日。蓮が正式に「黒帳」
組織に入ってた時は普通の平日───
学校には来なかった──
生徒「なぁ、結翔。」
結翔「ん?」
生徒「最近、蓮来てなくね?」
結翔「……あー。」
結翔「そういや、最近見てねぇな。」
生徒「今日で何日目だっけ?」
結翔「……一週間。」
生徒「一週間!?」
生徒「アイツ、皆勤賞でも狙ってんのかと思ってたわ。」
結翔「…………。」
生徒「結翔、お前よく蓮と話してたじゃん。」
結翔「まぁ……。」
生徒「何か聞いてないの?」
結翔「……何も。」
生徒「そっかー。まぁ寝込んでんじゃね?」
結翔「………サボり癖ついちまったのか…?」
結翔(いや、あいつに限って…学校を休むなんてな…風邪とかか?でも前あった時は普通だった……何かあったとか?)
結翔(……あぁ……これ…あいつのこと、何も知らねぇんだな。俺。)
───
その後も、学校はいつも通り過ぎていった。
授業。
休み時間。
昼休み。
くだらない話。
笑い声。
何も変わらない、いつもの一日。
……なのに。
結翔「…………。」
結翔の視線は、何度も同じ場所へ向いていた。
蓮の席。
そこだけが、ぽっかりと空いている。
結翔「…………。」
結翔(いつもなら、あそこにいるのにな)
結翔(寝てたり)
結翔(変なことしてたり)
結翔(……俺がツッコんだり)
結翔「…………。」
結翔(……。)
結翔(やっぱ、変な感じだな。)
───放課後。
結翔は一人で帰っていた。
別に、目的地なんてなかった。
ただ、いつもの道を歩いていただけ。
……だったはずなのに。
結翔「…………あれ」
気づけば、足が止まっていた。
結翔「ここって……。」
目の前にある場所。
以前、蓮と二人で月を見た場所だった。
結翔「…………。」
結翔「……あん時の?」
結翔「なんで……」
結翔「よりによって、こんなとこたどり着くんだよ……俺」
小さく息を吐く。
結翔「……バカみたいじゃん。」
近くにあるベンチへ腰を下ろす。
そして、膝を抱えるようにして体操座りになる。
結翔「…………。」
自分の膝に頭を預ける。
何をするわけでもない。
ただ、そこにいた。
やがて――
太陽が沈み始める。
夕焼けの光が薄くなっていく。
昼と夜の境目。
まだ空には太陽の名残がある。
けれど、その淡い光の向こう側から――
月が少しずつ姿を見せ始めていた。
結翔「…………。」
顔を上げる。
結翔「……月だ。もうそんな時間か。」
以前、蓮と一緒に見た月。
けれど今日は、一人だった。
結翔「…………。」
その月を見ていると、また蓮のことが頭に浮かんだ。
結翔(……今、何してんだろ。)
結翔「そろそろ帰んないとか……」
その時。
コツ。
コツ。
遠くから、足音が聞こえた。
結翔「…………?」
誰かがこちらへ歩いてくる。
??「あれ……。」
結翔「…………。」
??「もう誰もいないと思ってたのに…時間帯ミスった…」
その声に、結翔が振り返る。
結翔「…………!」
そこにいたのは――
蓮だった。
蓮「……。」
蓮は結翔を見つける。
そして、少しだけ目を丸くした。
蓮「……って結翔くんじゃん。」
結翔「…………。」
久しぶりに見る蓮。
けれど――
結翔「…………。」
何かが違う。
いつもの蓮。
柔らかい声。
少し刺のある口調。
表情も、確かに蓮だ。
なのに。
結翔(…………。)
結翔(なんだよ、この感じ。)
以前より、ほんの少しだけ――
大人びて見えた。
蓮「ねぇ、結翔くん」
結翔「ん?」
蓮「感情って、あった方とない方、どっちが楽だと思う?」
結翔「………は?久しぶりにあって…最初の会話が…感情の話なのな……お前らしいな」
蓮「まぁ、ただふと思い出した質問がそれだったから」
蓮「気にしないで」
蓮は月へ視線を向ける。
蓮「俺さー最近、全く月を見れてなかった。」
蓮「……まぁ、それどころじゃなかったから当然か。」
結翔「……蓮」
蓮「ん?」
結翔「お前……なんで学校来なかったんだよ?」
蓮「…………。」
結翔「しかも一週間……」
結翔「……なんかあったか、とは聞かねぇから」
結翔「そこは気にすることない。」
結翔「……でもよ。」
結翔「その……。」
結翔「そ、相談ぐらいは、乗ってやるし……。」
結翔「俺、頼りないって思われがちなんだけどよ。」
結翔「…人は見かけに寄らないだろ?」
蓮「…………。」
蓮は少しだけ目を細める。
蓮「……結翔くん」
結翔「ん?」
蓮「ありがとう」
結翔「…………。」
蓮「理由としては俺、今すごく忙しいんだ。」
結翔「忙しい?」
蓮「うん」
蓮「心と頭が、時間に慣れてないから……忙しいって感じた事なかったものだから」
結翔「…………。」
蓮「だからさ───久しぶりに結翔くんとこうして話せるのが……。」
蓮「何ヶ月ぶりに思えちゃうし」
蓮「俺の感覚がおかしいや。」
少し間が空く。
蓮「あ」
蓮「でも、それはいつもの事か。」
結翔「…………!」
結翔(今……。)
結翔(自分でツッコんだ……?)
結翔(今までの蓮は、何に関しても無愛想で……。)
結翔(好奇心は旺盛で、変な行動ばっか取るし……。)
結翔(いくら俺がツッコんでも、直る気配なんてなかった。)
結翔(なのに――。)
結翔(今の蓮は……。)
結翔(…………っ)
結翔(分からない……それはそうだろ……俺は蓮のなんでもないんだ。わかるはずがない)
結翔(だけど……)
結翔(心は、そう感じてしまう……)
蓮「結翔くん?」
結翔「……。」
蓮「どうかした?」
結翔「いや」
結翔「なんでもねぇーよ。」
蓮「…………。」
蓮は何も言わなかった。
ただ――
優しい目で、結翔を見る。
そして、また月へ視線を戻した。
結翔「…………。」
結翔(いつもなら……。)
結翔(いつもなら、笑って誤魔化したり。)
結翔(ふざけたり。)
結翔(何かしら茶化したりするだろ……。)
結翔(なのに――。)
結翔「…………。」
結翔(何かを訴えてる。)
結翔(そんな気がした。)
蓮の横顔に、月明かりが重なる。
夕暮れの残りと、昇り始めた月。
そのどちらにも染まりきらない姿。
結翔(…………。)
その姿は――
月と一体になったように見えた。
誰が見ても、儚かった。
そして結翔は、まだ知らない。
蓮がこの一週間、何を見て。
何を知って。
誰と出会って。
どれだけ振り回されてきたのか。
ただ一つだけ。
以前とは違う。
そのことだけは――
なぜか、分かった。
コメント
1件
読了しました。第9話、静かで切ない空気感がとても良かったです。蓮が一週間も学校を休んでいたこと、結翔が何度もあの空いた席を見てしまう描写に、彼の心のざわつきが丁寧に描かれていて、じんわり来ました。そして再会した蓮の「感情、あった方とない方どっちが楽?」という問いかけ。以前より「大人びて見えた」という結翔の気づきに、この一週間で何があったのか想像が広がります。月の下で、何かを訴えかけるような蓮の横顔が印象的でした。