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「帰ってきてすぐにこれか」
まぁいい、せっかく来てくれたんだ観光くらい付き合ってやろう。
しかしながら今日は長旅で疲れたし、一度屋敷に帰ろう。
「じゃあ俺、丘上の屋敷にいるから。明日なら付き合ってやるから」
「おっ、そうか。おいソニア、ホテル行くってよ」
「すぐ行く」
二人のお付きの騎士らしき人物達が、砂浜に広げたパラソルなどを回収していく。
ソニアは麦わら帽子と、白のブラウスを羽織り、囲われている人混みの中から出てくる。
あいつら同じホテルをとってるのか? 仲良いなと思いながら屋敷に向かうと、なぜか王子と王女一行がついてくる。
なんでついて来るんだ? と思いつつも屋敷へと到着。石造りの重厚な壁、幾重にも広がるバルコニー、庭には色とりどりの花が咲き誇り、噴水の水音が心地よく響いている。
「帰ってきたー」
「はーやっぱいいとこ住んでんな」
「美しい建築物だ。合格だ」
「……俺は今、非常に嫌な予感がしている。お前たちのとったホテルとはどこだ?」
「「ここだが?」」
「ここはホテルじゃない! 俺の家だ!」
「硬いこと言うなよ」
「この島、警備がしっかりして泊まれるところがここしかなかったのだ」
「最初からウチに押しかけるつもりだったんだな?」
「おう」
「ああ」
悪びれもせず頷く二人。俺が島に帰るの一日遅れたりしたら、どうするつもりだったのか。
門を開いて敷地内に入ると、爺やが駆け足でやってきた。
「ラウル様~おかえりなさいませ!」
「ただいま爺や」
「ダークラインでのご活躍が認められて、成人されたと聞いております。おめでとうございます」
「ありがとう」
「爺は、ラウル様の実力が認められる日がきっと来ると思っていました。第一王子のイケテル様ですら、成人されたのはラウル様より一年後。ラウル様の、これからのご活躍がますます――」
長くなりそうだなと思い、俺は話を遮る。
「ごめん、爺や中入るよ」
「申し訳ございません、お疲れのところを! おや、こちらの方々は?」
当たり前だが、俺の後ろに並ぶ面々に気づく爺や。
「知らん人達だ」
「ツレです」
「美しき友人だ」
「まさかラウル様が、ご友人を連れてこられるとは。爺や感動しております! ささ、中へどうぞ」
爺やはマジで簡単に詐欺に引っかかりそうで怖い。
まぁええわ、ここまでついてきたら追い返すこともできんと諦める。
屋敷内へと入ると、広いエントランスホールが彼らを迎えた。シャンデリアが天井に輝き、大理石の床は磨き上げられている。
控えていたメイドたちが「「「お帰りなさいませ」」」と声を揃え、礼をする。
「ほぁ~中も広いな~」
「皆様、お部屋はこちらでございます」
「あぁどうもすみませんね」
「お構いなく」
爺やは、もはや本当の客としてジャガーとソニアを扱っている。
「そいつら全員納屋でいいぞ」
「オレ海が見える部屋がいいな」
「私は一番高い部屋がいい」
二人は我先にと、階段を上がっていく。
なんて面倒なVIP共なんだと思いつつ、キッチンへと入ると良い香りが漂ってきていた。香ばしく焼かれたローストビーフ、じっくり煮込まれたシチュー、湯気の立つパン、色とりどりのサラダが長テーブルに並べられている。
「おぉご馳走だ」
丁度エプロン姿のママ上が、厨房から出てきて俺と目が合う。
彼女は父王と謁見していた俺より一足早くに帰って、食事の準備をしてくれていたのだった。
「ラウルちゃん、お帰りなさい」
彼女は文字通り胸を弾ませて、俺を抱きしめてくれる。
ママ上の石鹸の香りが肺の中に広がり、柔かい感触が俺の顔を挟み込む。もう一生ここで暮らしていきたい。
「珍しいね、ママ上が先に帰るって言うの」
「ラウルちゃんが帰ってきた時に、温かいご飯を出したかったから」
なんともいじらしい。
「やっとおうちに帰ってこれたね……」
彼女は俺の耳元で優しく囁くと、頬や額にキスをしてくる。窓ガラスに映った俺の顔は、彼女の口紅跡だらけになっている。
彼女はそうするのが当然かのように、最後に唇に――
「おま、母ちゃんとキスしてんのか?」
「これは……親子美?」
そんな言葉はない。
お邪魔虫なジャガーとソニアが現れ、キッスはお預け。
ママ上は二人を見て、一瞬キョトンとする。
「あらあら、ジャガーちゃんにソニアちゃん?」
「どうもっす、ラウル王子にお呼ばれしました」
「この度はお招きいただき、ありがとうございます」
呼んどらん、呼んどらん。
「まぁまぁとっても仲良しさんになったのね。お食事たくさん作ってるから食べていって」
「あざざまーす」
「感謝致します」
ママ上はたくさん人がいて嬉しいのか、上機嫌で厨房に戻っていく。
するとジャガーが肘で俺をついてくる。
「お前の母ちゃんエロすぎないか? 胸にキングスライム二匹くっつけてるだろ」
「美の化身たる私とは、また違った大人の美がある」
「スキンシップも、ちょっと度を越えてるような気がするし」
言うかどうか迷ったが、こいつらならいいかと思って事情を話す。
「ママ上は本当は父上の愛人で、義母関係だったんだけど、去年父上に言って関係を認めてもらった」
「待って待って、情報量が多い」
「それはつまり……義母と交際しているという?」
「まぁそういうことかな。あとは聖剣とか、サキュバス化とかいろいろあるから、一般的な交際とは違うと思うけど」
「お前の母ちゃんサキュバスなの?」
字面だけ聞くと、なんだか嫌な響きだな。
「いろいろあって。魔族転生した」
「はー……マジか、道理でフェロモンがエグいと思った」
「ママ上が水着でビーチに出たら、男は全員前かがみだし、カップルは高確率で喧嘩する」
「そらするだろ」
「ふ~む、魔界の妖艶美という奴か」
「今思えばお前への対応が、母親ってより新婚みたいだったしな。飯以外興味なさそうなツラして、意外とやるな」
ジャガーが再び腕で突いてくる。
すると、俺の聖剣からナハトが飛び出してきた。
彼女はコウモリ羽をはためかせて、天井近くまで浮き上がると、俺のことを不機嫌そうな目で見下ろす。
「うぉっサキュバス!?」
ジャガーは、サキュバススーツに身を包むナハトを見て、一瞬腰を抜かしかける。
「どうしたナハト?」
「なーんか皆勘違いしてるから出てきた。ラウルと付き合い始めたのは僕が一番最初だから。ステラが正妻扱いされててムカついた」
「お前この高級娼館にいそうなサキュバスちゃんにも手出してたのか? それはまずいんじゃないか?」
「手を出したというか、地面から引っこ抜いたというか」
なんと言っていいか説明に困る。
「公私にわたって頼りになる相棒みたいなもんなんだ」
「え~僕頼りになる~?」
嬉しそうに両頬を押さえて喜ぶナハト。
すると先に帰っていたヨハンナもキッチンへと現れる。
「なぁ王子、ちょっと考えたんだけど、あたし別にハーレム入りしてもいいぞ。あたし結構お前のこと気に入ってるし、面倒見てやってもいいぞ」
ヨハンナの爆弾発言によって、ジャガーやソニアたちの視線が俺に突き刺さる。
「「ハーレム?」」
「ちょっと誤解していると思うが、決して君等の想像しているようなものではない」
「「…………」」
その目は信用してないな。
「さすが悪王子だな。手が早い」
呆れるソニアだが、ジャガーは大きく首を振る。
「オレは尊敬するぜ。王族がリスクを避けて嫁を複数人作るのは合理的だ。……ところでラウル君、オレはこの件に関して、何があってもお前の味方だ。だからサキュバスと仲良くなる方法教えてくんね?」
こいつらを屋敷に連れてきたのは、判断誤ったかもしれない。
コメント
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え、今回めっちゃくちゃ面白かった……!😭💕 帰宅していきなり押しかけられた上に、ママ上(義母!?)とのスキンシップを目撃されるとかシュールすぎるw でもママ上が温かいご飯用意してくれてるところ、すごくいい母親だなって思ったよ〜!🥺✨ そしてナハトの「僕が最初」発言&ヨハンナのハーレム宣言、しかもジャガーが便乗しようとしてるの草www この賑やかさ、めっちゃ好きです!次も絶対読む!🔥