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俺はqn。dzl社というゲーム実況グループで実況をしている。
突然だが、俺には想い人がいる。
そう、同じグループのorという青年だ。
彼は、とても可愛くて、面白くて、そしてかっこいい。好きなところを上げろ、と言われてもたくさんありすぎてすぐには言えないくらいだ。
少し天然でドジっ子なところも、俺にとても懐いてくれているところも、たまに見せる大人な部分も、下ネタが大好きですぐ爆笑してしまうところも。全部が大好きだ。
そんな彼に、俺はいつから惹かれていたのだろう。
具体的な月日はわからないが、決定的な瞬間は覚えている。
あれは2年前のオフで会った時。
あの時俺は、精神的に少し不安定だった。動画にアンチコメントがついているのを発見してしまったのと、RTAの記録が伸び悩んでいた時期が重なってしまい、よく落ち込むようになった。
その時、orが俺に電話をかけてくれて、一緒にご飯を食べに行った。俺の大好きなご飯を。
いつも通り雑談していたが、ふとした瞬間に双方とも黙って、沈黙が生まれた。なんとなく気まずくて、喋り出せずにいると、orがふと聞いてきた。
『…qn、最近大丈夫なん?無理は絶対にせんでな?』
俺の手を握って放った、たった二言。
俺はこの言葉を聞いた瞬間、涙が溢れてきた。涙と同時にこぼれ出てしまった俺の汚い部分。
みんなの役に立たないかもしれない、という焦り。
RTAのスランプのような時期に入ってしまったかもしれないという悲しみ。
orに心配をかけてしまったという申し訳なさ。
どれが俺の本音なのかわからなくて、ぐちゃぐちゃな話をしてしまった気がする。
それでも彼は、優しく微笑みながら話を聞いてくれた。その笑顔と温かい手に俺は恋を自覚した。
あれから約2年。
俺はいまだに想いを伝えることができていない。
いつか、orにこの想いを伝えたい。
でも、キモがられて嫌われるかも。と恐れているのも事実。
“もしも、恋人になったら”
何度想像したことだろう。
orの優しくて柔らかい唇。
俺の頭を撫でる温かくて大きな手。
いつか、本当になったらいいのに。
そんなことを毎晩考えながら眠りにつく。
今日も、いつも通りこのまま眠りにつくはずだった。
「…い””っ、!何…、?」
自分の体全体に大きな痛みが走る。まるで、体中を鋭い刃物で刺されたような、そんな感じ。
痛くて、とても痛くて、涙が溢れてしまう。
「っふ、…!な、に…これ…。」
俺の頬を伝って落ちたのは、いつもの透明の液体ではなく、澄んだ青色をしたしずく型の個体。
まるで、orの目のようなその色に俺はつい見入ってしまう。
「…これ、なに…、?宝石…みたい、」
その個体を手に取って電気に透けさせてみる。
キラキラと輝く、その個体。
「…調べて、みよ…。」
流石に怖くなった俺は、スマホを取り出して調べてみることにした。本当は眼科に行きたかったが、なんせ今はド深夜。流石にやっていない。明日にしよう、と決めて調べ始める。
『涙 宝石 痛い』
そう入力して、検索してみる。
検索欄の一番上に出てきたのは、ある奇病だった。
「…ふーん、涙石病…かぁ。」
発動条件は、片想いの恋をすること。
症状は、片想いを視界に映したと同時に、全身に強烈な激痛が走り、生理的に涙を流れる。その涙が頬を伝って零れ落ちたと同時に、好きな相手の瞳と同じ色の涙型の宝石が生成される。というもの。
治す方法は、好きな相手と両想いになること。その時に、自分の瞳と同じ色。すなわち、俺の瞳の色である、深緑色の宝石が生成されたら完治した証拠になるそうだ。
俺の症状のまんまのことが書かれていて、少し安心すると同時に、治すにはorと両思いにならないといけない。という難しい問題が生まれた。
「…無理、だよなぁ…。そんなの、…。俺には、orなんて見合わないし…、w」
orには俺なんかは見合わない。だって、あんなに素敵でかっこよくて、可愛い人なんだから。きっと俺よりも可愛くて綺麗な女性の方がorには似合う。
それに、俺らは男。こんな気持ち、orにとっては気持ち悪いもの。だったら、このまま俺が痛い思いをし続けるだけでいい。
それでorが嫌な思いをしないなら。心からそれでいいと思えた。
次の日
カーテンから入る光と鳥の鳴き声で目覚めた。
「んー…。ふわぁぁ…。んんっ…。」
少し伸びると自然にあくびが出てきた。
今日はdzl社の撮影の日。
…orといっぱい話せる日。
「…っゔ、!?…っいた、…。」
また体に激痛が走り、宝石がポロリと落ちる。その宝石は、昨日よりも少し大きくなっているような気がした。
そのあとは特に症状もなかったので、パソコンを起動し、マイクラをつける。そしてディスコードに入ると、もうすでに何人かが集まっていた。
「おはようございまーす。」
dz「あ、おはよ〜。」
mn「おっは〜。」
or「qn、おはよっ!」
「…おはよ、」
みんなの声が聞こえる。
orに自分の名前を呼んでもらった瞬間、わかりやすく心臓が跳ねる。今俺はとても情けない顔をしているに違いない。
orに名前を呼んでもらえるだけで、こんなに嬉しいなんて…。俺は重症だな…w
いつも通りbnさんは遅刻のようで、dzさんがbnさんに連絡を入れようとしている。
dz「もー、ほんとに…。めんどくさいなぁ…。」
mn「そんなこと言いながらいっつも呼んであげてるじゃないですかぁ〜w」
dz「まあね〜w いないと困るし。」
or「確かに、ww」
「今日の主人公役、bnさんですしね。」
dz「そうそう。昨日散々確認したのに…。まったくもー…。」
or「あははっ、w」
orの軽やかな笑い声が聞こえる。俺の好きな笑い声がイヤホン越しに響く。
あぁ、やっぱり俺、orが好きだ。
「…っ、!!、」
そう思った瞬間、また体が痛んで涙が溢れる。イヤホンの外に、硬い音が響いた。
「…っふ、…ぅ、…。」
体中がズキズキと痛むが、みんなに心配をかけたくないため、必死に声を我慢する。
今日のご飯の話題で盛り上がっているみんなには今の音たちは聞こえなかったようで、ほっと息をつく。
そっと椅子を降りて先ほど落ちた宝石を拾う。本当に綺麗だ。こんなにも痛いのに。