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岡田は目を覚ました時、日の光が差し込んでいなかった。目の前の現実が、夢なのか現実なのか分からないような不安定な感覚に包まれていた。木下の裏切り、田中の件が彼の心に重くのしかかっていた。だが、すぐに気づいたのは、今、目の前に新たな問題が迫っていることだった。
その日、岡田が勤務している警察署に、またもや不審な通報が入ってきた。内容は信じがたいものだった。
「岡田さん、これを見てください。」
助手の中山が急いで資料を持ってきた。
「また新しい案件ですか?」
岡田は渋々その資料を受け取る。
中山が口を開く。
「はい。これ、動物に関する闇バイトが存在するという情報です。詳しい内容はまだ不明ですが、どうやら動物たちが関与しているという証拠が上がっています。」
「動物?」
岡田は思わず声を上げた。この数ヶ月の間に、いくつかの異常なバイトが絡んでいることはわかっていたが、動物が関わるとは思いもよらなかった。
中山は続けて言った。
「一部のペットショップや動物病院から、非合法な取引が行われている可能性があるんです。例えば、薬物を使って動物を麻痺させ、違法な仕事をさせている…」
岡田の顔色が変わった。
「まさか、動物にバイトさせるなんて、どういうことだ?」
ただならぬ事態が進行していることを直感的に感じ取った。
そのまま、岡田と中山は現場のペットショップへと向かった。到着すると、店内は静まり返っていたが、店員は少し緊張した面持ちで迎えてくれた。
「どうしましたか?何か問題でも?」
店員が少し疑いの目を向ける中、岡田は冷静に答える。
「実は、あなたの店で不審な取引が行われているという情報を受けて来ました。」
店員は一瞬固まり、次に息を呑んだように見えた。
「そ、それは…おそらく誤解です。うちはただのペットショップです。そんなこと、していません。」
岡田はその店内を一通り見回した後、目を引いた一角に近づいた。そこには、見覚えのある動物たちがいた。特に目を引いたのは、一匹の小さな犬と、一羽の鳥だった。
「この犬、どこから来たんですか?」
岡田はその犬に近づき、注意深く尋ねた。
店員は少し黙り込んだ後、答える。
「それは…ああ、持ち込まれたんです。いわゆる、あまり人気のない品種で…すぐに引き取られる予定だったんです。」
「その鳥は?」
岡田は次に鳥に目を向ける。
店員はその目線を避けるように話した。
「鳥は、注文があったんです。今すぐに必要な方がいて…」
岡田の直感は確信に変わり、店員の動揺を見逃さなかった。
「あなた、動物を使った違法なバイトをさせているんですね。」
岡田の言葉に、店員は明らかに動揺した。
その瞬間、店の裏手から何か音がした。岡田はすぐに反応し、店員を振り返る。
「誰かいるのか?」
店員は顔色を失い、言葉を詰まらせる。
「いや…でも、ちょっとだけ待ってください。」
その時、背後からガサガサと音がして、ドアが開く音がした。岡田が素早く振り返ると、驚くべき光景が広がっていた。
目の前には、複数の犬や猫、さらには小動物がケージの中に無造作に押し込まれていた。その中には、麻痺したように動けない動物たちが何匹も見受けられた。さらに、その近くには数枚の紙と一緒に小さな金銭の袋が置かれていた。
「これ、何だ?」
岡田はその紙を手に取り、確認した。そこには、ペットたちを使った違法な仕事のリストが書かれていた。その内容には、動物を麻痺させて運び屋として使う、薬物を隠して運ぶなど、無惨なものが並んでいた。
「これが…動物闇バイトか。」
岡田は呟いた。
店員は観念したように頭を下げた。
「すみません…頼まれていただけなんです。あいつらが…あいつらが…」
岡田はその言葉を聞く前に、すでに警察に連絡を入れていた。
その後、店は押収され、店員は逮捕された。岡田は一瞬、店員の後ろ姿を見つめたが、その目にはどこか人間らしい弱さが見え隠れしていた。無理に引き寄せられ、罪に手を染めることになった彼にも、ただ単に生活のために選ばざるを得なかったという事情があったのだろう。
しかし、それでも岡田は決して許すことはできなかった。
「この世界には、無責任に他者を利用する輩がいる。だが、それを止めるために俺はここにいる。」
岡田は心の中で決意を新たにし、次なる闇を追う覚悟を固めた。