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#普通
野々さくら
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ありあ
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轟々と燃え盛る炎が村を呑み込み、黒煙が夜空を覆っていた。
炎の向こうで、人々の悲鳴と憎悪が交錯する。
その光景を見つめる少年の拳は震え、血が滲むほど強く握り締められていた。
「あいつら・・・」
歯を食いしばり、喉の奥から絞り出すように呟く。
「なんて事を・・・」
瞳には怒りと悲しみが渦巻き、その感情はやがて決意へと変わっていく。
「絶対に許さない」
燃え落ちる家々を見据え、少年は低く、しかし力強く誓った。
「この恨みは、絶対に晴らしてやる」
炎が揺らめく中、男は天を仰ぐ。
「この世界を──」
わずかに息を吸い込む。
「人間を──」
その言葉は最後まで紡がれぬまま、意識は闇へと沈んでいった。
◇ ◇ ◇
「っは!!」
坪野康仙は勢いよく身を起こし、荒い呼吸を繰り返した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
額には汗が滲み、胸は激しく上下している。
「また・・・あの夢か・・・」
静寂に包まれた部屋へ、慌てた足音が近づいてきた。
「教祖様!」
襖が開き、信者が心配そうに駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
坪野はゆっくりと息を整え、穏やかな笑みを浮かべた。
「ああ・・・君たちですか」
「心配いりません。少々
懐かしい夢を見ていただけです」
若い信者がすぐに水の入ったコップを差し出す。
「これをお飲み下さい」
坪野は静かに受け取り、小さく頷いた。
「ああ、ありがとう・・・」
すると別の男が一歩前へ出る。
「何をおっしゃいますか! 我々にとって教祖様は
救いを与えてくださる神も同然でございます」
「その通りです!」
さらに別の男も続く。
「行き場のない私たちに、一度は命を諦めた私たちに
「生きる希望を生きる目的を与えてくださいました!」
「その通りでございます!
教祖様の苦しみは我々の苦しみも同然です」
坪野は目を閉じ、静かに微笑む。
「ありがとう・・・」
その表情には安堵と、どこか諦めにも似た穏やかさが浮かんでいた。
「ですが、もうすぐです」
男たちは息を呑む。
「あと数日もあれば、この悪夢とも決別できる
皆の無念は、我々が必ず晴らします」
「当然です!」
「どんな事が起きようとも
我々は最期までお供させていただきます!」
その言葉に、坪野はゆっくりと頷いた。
「私は幸せ者ですね・・これ程までに
慕ってくれる君たちに出会えて」
男たちの目には涙が浮かぶ。
「教祖様・・・ぐすっ」
「もうすぐです・・・」
坪野は窓の外へ視線を向けた。
「そうです・・・真の悪とは人間であると
この世界を壊しているのは醜い人間であると
そう・・・知らしめるんです」
静まり返った部屋に、その声だけが響く。
そして坪野はゆっくりと立ち上がった。
「機は熟しました」
そして、信者たちを見渡しながら、静かに、しかし確固たる決意を口にする。
「では・・・決行の刻ですよ」
誰一人として迷う者はいなかった。
狂信にも似た眼差しが、一斉に教祖へと向けられる。
坪野は不気味なほど穏やかな笑みを浮かべる。
「この世界を一度、失敗作として葬り去り
あるべき姿へ新しく創り固め直すんです」
◇ ◇ ◇
土曜日。狗頸拘置所。
重苦しい空気が漂う廊下を、龍河たちは刑事に案内されながら歩いていた。
龍河は申し訳なさそうに頭を下げる。
「すいません今日は無理言ってしまって」
刑事は呆れたように肩をすくめ、小さくため息を漏らした。
「まったくだ、無茶言いやがって」
苦笑しながらも、その表情はどこか柔らかい。
「まぁ、だがお前の話を聞いちまったら断る訳にもな」
信愛は静かに会釈する。
「ありがとうございます」
刑事は歩みを止めることなく続けた。
「わかっていると思うが、今回の面会は特例
超法規的措置だからね、それは理解してくれよ?」
刑事の忠告に龍河は真剣な表情で頷いた。
「わかってます」
「さあ、こっちだ」
「はい・・・」
龍河の返事に続き、銚子も静かに頷く。
「はい・・・」
刑事は重厚な扉の前で立ち止まり、鍵を回した。
「さあ、入ってくれ」
龍河は深く息を吸い込み、覚悟を決める。
「失礼します」
信愛、銚子、龍河の三人は、刑事に促されるまま面会室へと足を踏み入れた。
そこは何も置かれていない正方形の空間で、被疑者と信愛たちを隔てるパーテーションもなかった。
「こんな場所で?」
信愛は頭で思い描いていた面会場所と違うことに驚きを隠せない。
「面会って、なんか、こう
丸い感じのヤツがある場所で
するんじゃないんですか?」
信愛は身振り手振りで通話孔を表す。
「今回は上層部を通してない面会だからな
こんな場所しか用意できなかったんだ」
「なるほど・・・」
「とりあえず待っててくれ、すぐに呼んでくる。」
信愛、銚子、龍河は刑事に促され並べられている椅子に座って待っていると、刑事とともに、手錠をつけられた霊貴冥孤こと、汀ひなたがやってきた。
三人の姿を認めると、ひなたは懐かしそうに目を細める。
「なんだか懐かしい顔ね」
信愛は思わず息を呑む。
「霊貴・・・冥孤・・・」
ひなたはくすりと笑い、首を傾げた。
「久しぶりねお嬢ちゃん♬元気してたぁ?」
その馴れ馴れしい口調に、刑事が鋭く制した。
「汀ひなた!無駄話をするな!
ここは雑談の場じゃないんだぞ!」
ひなたは肩をすくめ、悪びれる様子もなく笑う。
「分かってるわよ、そんな
怖い顔しないの。モテないわよ(笑)」
刑事は額に手を当て、小さくぼやく。
「こいつ・・・」
その空気を断ち切るように、龍河が一歩前へ出た。
「はじめまして」
ひなたの視線が龍河へ向く。
「俺はオカルト雑誌MWで
ライターやってる馬場龍河と言います」
そう言って名刺を差し出す。
ひなたは名刺を受け取り、目を通すと、ふっと笑みを浮かべた。
「MWのライター?」
次の瞬間、何かを思い出したように声を弾ませる。
「あはは、もしかして私の記事書いてくれた人?」
ひなたの顔から笑みがこぼれる。
「あの記事助かったわよ♬
おかげで信者、かなり増えたのよね~♬」
ひなたは龍河を見下すような笑みを浮かべていた。
その行動にに龍河の眉がぴくりと動き、龍河は胸の内で毒づく。
(このクソやろー・・もう忘れてたのに
傷口に塩塗りたくりやがって)
怒りを押し殺しながらも、表情だけは崩さない。
そんな龍河を横目に、銚子が一歩前へ進み出る。
「本日はあなたに聞きたい事があって
面会を申し出ました」
ひなたは銚子をじっと見つめ、不思議そうに首を傾げた。
「おばさん・・・誰?初めて見る顔ね?」
その問いに、信愛は静かに口を開く。
「私の母です・・・」
銚子はゆっくりと頭を下げた。
「白縫銚子と申します」
ひなたは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに肩をすくめる。
「は?お母さん?」
そして、興味なさそうに椅子へ深くもたれかかった。
「まぁ、いいけど」
足を組み替え、三人を見渡す。
「さあ、さっさと始めましょうよ」
その笑みは、どこまでも余裕に満ちていた。
「私に何が聞きたいの?」
ついに汀ひなたへの面会が始まる。
この面会により、一同は天縁教団の真の目的、そして日本と言う国の存亡を揺るがす大きな陰謀を知ることとなるのだった。
LastFile前編−パンドラの匣──END。
LastFile後編−タルタロスの泪−へつづく。
コメント
1件
うわぁ…今回もヤバかった…!!(´;ω;`)💦 坪野教祖の過去のトラウマが明かされて、彼の「人間を滅ぼす」って思想の根っこが見えたのがすごく重かった…あの炎の村のシーン、想像するだけで胸が締め付けられる😭 そしてついに龍河たちがひなたと面会!あの飄々とした態度の裏に隠れた狂気が怖すぎる…「あの記事助かったわよ」の一言で龍河の傷口に塩塗るの、マジで性格悪すぎて笑ったけど好きです😂 銚子さんも登場して、次はどうなるんだろう…後編が待ち遠しすぎる…!!