「ん…」
何だか久しぶりに良く眠れた気がする…
ゆっくりと意識が浮上していく中、誰かに触れられている感覚に気が付いた
「しょっぴー?目、覚めたんか?」
聞き覚えのある声が頭の上から降ってきて、視線を上げると
同じグループの、向井康二が心配そうに覗き込んでいた
「んっ…康二?」
康二の片手は俺の頭を撫でていて、もう片方は俺の身体を抱き締めていた
「離せって…!何で、この体勢?」
「何でって…しょっぴーが寂しい寂しいって、泣くからやろ?覚えてないんか?」
【俺が寂しい…?】
信じ難い事を聞かされて、俺は慌てて飛び起きた
「嘘つくなよ!痛っ……!」
頭がズキズキと痛み、目の前がグルグル回って気持ち悪い
「あれだけ飲んでベロベロに酔っ払ったのに、急に動いたら危ないよ…」
一体どれだけ飲んだと言うのだろうか…記憶の全くない渡辺は、少し前の自分の行動を激しく悔いた
その日を境に、俺は向井にだけは気を使うのを辞めた…
きっと不満を漏らして来るに違いない、そう思っていたのだが
なんと逆に嬉しそうな顔する様になった
「気を使わなくなったちゅう事は、俺にだけ素顔を見せてくれてるって言う事やろ?そんなん凄く嬉しいやん」
どこまでも前向きな発言に、どっと疲れを覚え…渡辺は、深いため息を吐いた
「なぁ、しょっぴー!どこ行くん?」
昼ご飯を1人で食べたくて、人気の無い所を探していると…後から向井が声を掛けて来た
「俺は1人で行くから、着いてくんなよ」
少々強い口調で咎めてみても
「何でなん?せっかく2人っきりの撮影なんやし…一緒に食べた方が絶対美味しいって!」
そう言いながらカルガモの親子の様に、俺の後を付いて来る
端から見ると微笑ましい光景…しかし、俺はそれが不満だった
何度言っても聞き分けが悪く、やっと見つけた人気の無い安息の地でも
ちゃっかりと俺の横に座って弁当を食べていた…
「なぁ…俺が一緒に食べてやるから、飲み物買って来いって言ったら…康二、どうする?」
きっと呆れてくれるだろう…
居なくなってくれたら尚良しと…そう、何気なく聞いてみたら
「えっ…そんなんで、一緒に食べてくれるなら…俺、全然行くで?」
そう言った向井は立ち上がり、自販機のある方に向かって歩いて行く
やっぱり途中で嫌になったのかと、Uターンして戻って来たので声を掛けると
「しょっぴーって、コーヒーはブラックで良いんよな?」
ただのオーダーの確認だった
コメント
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人付き合いの悪い💙がまだ想像できないけど、仔犬男子の🧡が優しくて可愛いのは想像できる🥰🥰続きがむちゃくちゃ楽しみです!