第21.5話「束の間の休息」
🚀 シーン1:戦いの余韻
ゼインは黒いジャケットの裾を翻しながら、夜の森を見上げた。
先ほどの激戦の痕跡がそこかしこに残っている。
「……なんとか、撃退できたな」
隣でナヴィスが、黒髪をかき上げながら肩をすくめた。
「まったく、お前はいつもギリギリの勝負しやがる」
リオナはエメラルドグリーンの瞳を伏せ、静かに言う。
「ヴェール・バインドは一度撤退したが、次はさらに強力な戦力を投入してくるだろう」
ゼインは小さく息を吐いた。
「……だったら、それに備える時間が必要だ」
ナヴィスがニヤリと笑う。
「お前が『休憩』って言うなんて珍しいな」
ゼインは無言で肩をすくめると、ふっと笑った。
「……腹が減った」
🚀 シーン2:碧族直営食堂へ
ゼインたちは、森の奥にある碧族専用の食堂へ向かった。
ここはライフカードを使って食事ができる、碧族のための特別な場所だ。
「へぇ……こういうところがあるのか」
ゼインは店内を見回す。
店内は未来的なインテリアで整えられ、壁には淡く光るフラクタル模様が描かれている。
テーブルは半透明の碧素でできており、天井にはゆっくりと浮遊する光の粒子が漂っている。
「注文するか」
ナヴィスはさっそくタブレットを操作する。
「ここでは、ライフカードを“食材”として使ってるんだよ」
ゼインは眉をひそめる。
「……つまり、寿命を食うってことか?」
「まぁ、そういうことだな。でも、普通の食事とは違う」
リオナが説明する。
「ライフカードを使うことで、食事をエネルギーに変換しやすくなる。だから、碧族にとっては栄養補給みたいなものだ」
ゼインは少し考えた後、メニューを見た。
《ライフステーキ - 1日分の寿命消費》
《エターナルスープ - 碧素エネルギー回復》
《リジェネドリンク - 戦闘後の回復用》
「お前、どれにする?」
ナヴィスがゼインを見た。
「……とりあえず、腹が膨れるやつ」
「じゃあ、《ライフステーキ》だな」
ナヴィスが笑いながら注文する。
🚀 シーン3:静かな食事
数分後、料理が運ばれてきた。
目の前に置かれたのは、不思議な輝きを持つステーキ。
ナイフを入れると、内部から青白い光が漏れ出す。
「……食べても大丈夫なのか?」
ゼインが怪訝そうに聞くと、ナヴィスが笑う。
「お前、もう碧族なんだし、平気だろ」
ゼインは少し警戒しながら、ひと口かじる。
——その瞬間、口の中に広がる強烈な旨味!
「……うまい」
ナヴィスが満足げに頷く。
「だろ?」
ゼインは黙々と食事を進める。
今は、何も考えたくなかった。ただ、戦いの余韻を噛みしめるように。
リオナも無言で《エターナルスープ》を飲んでいた。
その表情は険しく、次の戦いのことを考えているのが見て取れた。
🚀 シーン4:決戦前の約束
「……さて、腹も膨れたし」
ゼインは立ち上がり、ジャケットの裾を払った。
ナヴィスも腕を伸ばしながら言う。
「いよいよ、次の戦いが始まるな」
リオナはエメラルドグリーンの瞳を鋭く光らせる。
「ヴェール・バインドの前線基地……無事に済むとは思えない」
ゼインは拳を握った。
「それでも、やるしかねぇ」
ナヴィスが笑いながら、ゼインの肩を叩く。
「生き延びたら、またここで飯を食おうぜ」
ゼインも微笑み、頷いた。
「……約束だ」
——束の間の休息は終わり、戦いの幕が再び上がる。
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