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「大島くん、その・・・豊田さんが」
これ見よがしに他の人に聞えるように話していた佐藤さんも賢一の前ではおとなしいようだ。
「二股を・・・」
「佐藤さんになにか不利益でも?」
佐藤さんの言葉にかぶせるように話すと佐藤さんはそのまま黙ってしまった。
「豊田さん行こう」
声を掛けられ、賢一の後ろについて秘書課のデスクに戻った。
「ありがとう」
「いや、俺もうっかりしてたから。でも、こういうのは良くないからね、はっきりさせよう」
「どうやって?」
「俺にまかせておいて」
さっきも茂に助けられた、今回も・・・
悪意のある嫌がらせに対処ができなかった自分が情けない。そもそも、恋愛初級の自分にとって人の感情のコントロールは難しい・・・
終業時間を知らせるチャイムがなった。
かといって、帰宅できるかという訳では無いが一息つける時間でもある。
ところが、人事課長が現れたことでこの場が叩くと冷える瞬間冷却剤のように瞬時に冷えていった。
「大島君と豊田さんちょっといいかな?」
やっぱりーーーー!!
賢一を見ると軽く肩を上げてにっこりと微笑む、とても余裕があるように見える。
たしかに、悪いことはしていないけど交際うんぬんをわざわざ言わなくてはいけないのは不快だ、しかしこれ以上謂われのないデマを流されるのも迷惑であることも事実だ。