テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
リーダーが去った後の静寂は、気まずさに満ちていた。先に沈黙を破ったのは、宮舘だった。
「…翔太」
宮舘は、隣に座る渡辺の方を向かずに、ポツリと呟いた。
「…ごめん」
その謝罪に、渡辺は、わざと乱暴に、そして棘のある声で返した。
「あぁ?何が?」
それは、素直になれない彼なりの、精一杯の強がりだった。
「何がって…俺が、MVの時、あんなこと言ったから…」
「今更なんだよ…」
渡辺は、吐き捨てるように言った。そして、一度吐き出してしまった毒は、もう止まらない。
「お前の、そういうとこが気に食わねぇんだよ!いつもいつも、上から目線で!俺のこと見下してんだろ!?ロイヤル気取ってんじゃねぇよ!」
次から次へと、心にもない罵詈雑言が口をついて出る。
違う。本当は、そんなことが言いたいんじゃない。本当は、今すぐにでも謝りたい。
心の中で叫んでいる、本当の気持ち。それは、あまりに子供っぽい、みっともない感情だった。
謝るなんて、プライドが邪魔をして。
口が裂けても言えるわけがない。
だから、渡辺は真逆の言葉で、自分の心を武装するしかなかった。
その罵声を、宮舘は、ただ黙って聞いていた。その横顔からは、どんな感情も読み取れない。その無反応さが、さらに渡辺を苛立たせた。
「…なんか言えよ!」
叫んだ瞬間、渡辺の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。怒りなのか、悔しさなのか、悲しさなのか、自分でもわからない、熱い涙だった。
コメント
1件