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木曜日の朝。

冬美視点。





「じゃあ行ってくるよ。今日は新人さんの歓迎会があるから、少し遅くなるかもしれないから…」


玄関で靴を履きながら、話す夫の亮一を見ていた。


「あんまり遅くなるようなら、鍵はかけておくから、持っていってね」

「そうするよ、そんなに遅くならないとは思うけどね。じゃ、いってくるね、マル!」


マルの頭を撫でながら、ドアを開けて出て行く亮一。

いつもは店名の入った社用車だけど、今日は自家用車で出かけるようだ。

どうして?と聞こうとしたけど、エンジンをかけてさっさと出て行ってしまった。


「いってらっしゃい…」


歓迎会?嘘だ。

亮一は、この会話の間一度も私と目を合わせなかった。

言葉はよどみなく出てくるけど、私と目を合わせないということは、私に対して後ろめたいことがあるからだ。


本当に嘘がつけない人だと思う。

よし、私も行動しよう。


「マル!散歩に行こうか!」


尻尾をブルンブルン振るマルにリードをつけ、エチケットバッグ、帽子にサングラスを持った。


スマホで先に聡美にLINEする。


〈散歩が終わったら、行ってもいい?〉


ぴこん🎶

《いいよー》


玄関ドアを開けて、周囲をうかがう。

あの日の車はいないようだ。


あの日に銀子を見かけて以来、外出する時はできるだけサングラスをしていた。

そしてあの日以来、夫の様子にも目を配っていた。

もしかすると、今日、何かあるのかもしれない。

聡美に話してみようと思った。


「なるほどね…今日か。ね、まずは本当に歓迎会かどうか調べてみる?」


冷たい紅茶でもてなしてくれる聡美は、今日はさらにワクワクしてるようだ。

私は、銀子が来た時から亮一の行動を見張っていたこと、どうも隠し事がありそうなこと、スマホを手放さないことを先に話していた。

そして夫が何かしそうな時は、聡美に協力してもらうことも決めていた。


「調べると言っても、私、夫の職場には一度しか行ったことないんだよね。かと言って電話して聞くのも変じゃない?」

「そうだね、もしも職場の女が相手だったら、やっかいだし…」


あの銀子が誰なのかはまだわからない。

職場の女なのか、亮一と特別な関係があるのかもわからない。

夫が、何か隠し事をしているということは間違い無いのだけど。


「一緒に買い物行こうよ、ランチしてからさ。私も卵と牛乳買わないといけないし」

「そうだね、行ってみる」

「ね、スーパーには一度しか行ったことないなら、冬美さん、顔バレしてないよね?」

「多分ね。あの人が着任した初日に挨拶しただけだし。パートさんたちはわりと入れ替わりがあるって聞いてるから私のことを知ってる人はいないと思うよ」

「よし。じゃ、私が亮一さんの奥さんのフリをしとくから、そのつもりでね」

「うん、わかった」


店長の奥さんなら、こんな服装かな?なんて衣装選びを始めている。


「そんな、普通でいいから!」

「え?そう?せっかくだから、それらしくしたかったんだけど…。サングラスはして行こうっと。でももしも、亮一さんがいたら、そのときはさりげなくやり過ごしてね」


ランチを済ませて、聡美の車でスーパー【マミーズマート】中洲原店へ向かった。


卵が安いといいなぁ、なんて呟いてる聡美を助手席から見ていた。

浮気なんだろうか?

今夜、その女と会うのだろうか?


駐車場に車をとめると、それぞれカートを押して中に入る。

私は慌ててマスクをした。

お店に来たことを亮一には知られたくなかったから。


「あ、お魚、新鮮だね?ここ、あんまり来たことないから知らなかったけど。お野菜も新鮮だし…」


聡美は、マジの買い物をしている。

私は、三角巾とエプロンをつけて忙しそうに働いているパートさんたちを見ていた。


この人?

いや、こっち?

三角巾とマスクも付けているので、顔はわからない。


「あの、ちょっといいかしら?」


前を行く聡美が、一人のパートさんをつかまえて、何か質問していた。


「はい、なんでしょうか?」

「このお魚って、オススメの食べ方ありますか?」

「白身で臭みがないので、フライにして甘酢餡かけとか、カルパッチョがオススメですよ」

「ふーん、それだったらうちでもできそう!えっとそれから、ここのパートって、今は募集してないの?」

「えっと、店長に確認してみないとわからないんですけど…あ、チーフ!店長ってどこですか?」


店長と聞いて、ドキッ!とした。


「チーフと呼ばれた女性がやってきた。店長?あー、今日は午後休なのよ。さっき帰った、なんか奥さんの体調が悪いとかで…。何か用だった?」

「いえ、こちらのお客様が、パートの募集はしてますかってことだったので…」


___えっ?!午後休?歓迎会は?


私は無言で聡美を見たけど、聡美は素知らぬ顔でそこにいる。


「ごめんなさいね、なんだかここの人たち楽しそうに働いてるように見えたから。募集してないかなって思ったの」

「そうですか。人手が足りてないので、また近いうちに募集をかけると思いますので、その時はよろしくお願いしますね」

「わかりました。じゃ、店長によろしく!あ、帰っちゃったんだったね」

「はい、伝えておきます。毎度ありがとうございます」


私は少し離れて話を聞いていた。

耳を疑った。

奥さんの体調が悪いからと午後から休みを取ったという。


聡美が、カートを押して近づいてきた。


「ちょっと、今の話聞いた?」

「うん、なんで私の体調が悪いことになってるんだろ?」

「問題はそこじゃないから!午後から休みにしたのに、冬美ちゃんには帰りが遅くなるかもって言ったことだよ」

「あ、そうか。どこに行ったんだろ?」

「わからないけど…とりあえず買い物を済ませて帰ろう!それから考えよう」

「うん」


念のため、従業員用の駐車場を車でまわってもらった。

亮一の車は見当たらなかった。

そして私は、亮一のスマホに電話をかけてみたけど、留守電になった。

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