テラーノベル
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……何を言っているんだろう、この狂った女は。殺して欲しい、だと?
「私ね、何故か死ねないの。」
困惑した頭に、また新しい言葉が流れ込んできた。吸血鬼だからといって納得できるわけが無い。すると、彼女はまた話し始めた。
「時々、自分を制御出来なくなるの。血が欲しい、飲みたい!と思うと体が自分のものじゃなくなるの。だから、一番好きだった人を殺してしまった時は私も死のうと思ったわ。でもね、何回刺しても飛び降りても、どこを捥いでも血が垂れるだけで死ねないの。」
そういう彼女の瞳は、水面のように揺れているような気がした。白いまつ毛が赤い瞳にとても映えて美しかった。護りたいと思わせるほどのビジュアルに目を逸らす。そして俺は答えた。
「わかった。……でも、殺すタイミングは俺が決める。それでいいか?」
彼女は瞳を輝かせて頷いた。また、またその目。その目で見つめられるだけで、心がキュッとする。彼女の能力か何かなんだろうか。吸血鬼なら出来るかもしれない。というか、本当に分かっているのか?そう言い聞かせて、自分の気持ちに蓋をした。
「あ、そうだわ!お名前聞いてなかったわね。私はイブ。貴方は?」
この状況でまず自己紹介とはますます狂っている。
「俺は雪。伽ヶ坂雪」
死体と吸血鬼と人間という、意味不明な空間の中で自己紹介をした。お願いの前に自己紹介をした方が良かったのではないかという言葉は飲み込んだ。
────夜が明け始めていた。
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