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くしゃくしゃに踏み潰された落ち葉が、跳ねるようにアスファルトの上を転がっていく。
ティッシュ配りのアルバイトやカラオケ屋のサンドイッチ・マンが次々と道行く人に声をかけている。
眠らない街。それが東京だ。忌々しい僕の地元とはわけが違う。
僕は繁華街における信号待ちが好きではない。
名前も知らない人間たちと、団子のようにまとまって赤い光が青くなるのを待つのは、好きではない。
『当職たちは、これで弁護士の仲間入りナリ。他の連中とは違うんだ』
信号待ちをしていると決まって、同期のメンバーが初めて顔を合わせたとき、Kが嬉しそうに言っていたことを思い出す。
僕以外の奴はあきれ顔だったっけ。クスクス笑ってる女もいたな。
でも、僕はその言葉を聴いたとき、おおいに心の中で賛同した。
僕が望んでいたのは、他の奴とは別の人間になることだったのだから。
僕の性癖をバカにした地元の連中を、田舎者だと陰で笑っていた大学の連中を、いつか見返してやろうと思ってあれだけ必死に勉強したのだから。
信号が青になった。頭の悪そうな若者が大声で卑猥な話題を語りながら前を歩いていく。
プラカードとスマホを持った男が通行人に何やら妙な質問をしている。
能面のような表情でスマホをいじりながら歩く若い女がいる。
どいつもこいつもだらしない口元をして、脳みその大部分が死んでしまったような顔つきをしている。
「……お前らとは違うんだ」
つぶやいて、胸元のバッヂに目をやる。
努力の証明。有能の証明。この鈍い光は、自分にとって心の安定剤のようなものだ。
おそらく、Kにとっても。
ポケットの携帯電話がバイブレーションしていることに気づいたのは、信号を渡り切ったときだった。
もしもし、と応答した瞬間に電話の向こうから大声が飛んでくる。
「Y! 大変ナリ! パパが、パパが……!」
電話越しの会話でよかった。
まずそう思った。
もし面と向き合ってこんなことを言われたら、口元がほころんでしまうのをKに見とがめられてしまうだろうから。