テラーノベル
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甲本の放った銃弾は、至近距離から掲げられたスマホを貫通して、ちずるの眉間に命中した。反動で、人形のように反り返った身体は、階段を転げ落ちていった。
それでも甲本は発砲をやめなかった。
ちずるの頭部、顔面に集中して浴びせられた銃弾が跳ね返り壁にめり込む。
その度に肉片や血液が飛び散っていく。
甲本は叫んでいた。
「謝れ!謝れ!謝れ!!!!!!」
全ての弾が切れた時、絶命したちずるの頭部は無くなっていた。
千切れた下顎から、ストロー状の血管が垂れている。
壁に張り付くように、銃弾で削げ落ちた頭部の髪の毛の側に転がる人間の大脳。
その色はどこかで見たことのある景色。
さくらテレビ局で死んでいた警備員のものと同じだった。
甲本は、それを幾度も幾度も踏みつけた。
正気を失った甲本の目から流れ出る涙は止まらないでいた。
意味不明に呟く声が、非常階段に響く。
それはお経のようだった。
「こんなもののために…こんなもののために操られてるんだ…こんな脂と脂肪の塊に操られてるんだ!君の視神経も嗅神経も自由だ!ヒトはこんなもののために生きていたんだ…脂と脂肪の塊に何ができる!!」
血の海に溺れる甲本は、真実を知らなかった。
ちずるは以前、甲本に好意を寄せていた。
それがふとしたキッカケで、ちいさな怨みへと変わってしまったのだ。
クラスメイトの女の子と口げんかをしたあの日、仲裁に入った甲本には自分の味方をして欲しかった。
それが違っていた。
「ふたりともやめなさい!」
頭ごなしの言い方に、思春期のちずるの心は深く傷ついた。
たったそれだけのことだった。
ちずるの亡骸が血に染まる、
うんと背伸びして着飾ったオフショルダーの服も、唯一の御守り代わりだったスマホも、彼女の人生を守ってはくれなかった。
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