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5月15日 02:00 都庁特捜機動隊本部 情報統括室。
作戦指令室の片隅に併設された情報統括室は、主に亀山が独占的に利用出来るブースとなっていた。
彼の指示で、川崎防災拠点のサイバー班は、必要な情報を直ちに特捜へ上げる役割を担っていた。
小学生の頃にパソコンを始め、中学生になると名の知れたハッカーとなった亀山は、東京国民銀行の顧客情報をハッキングしたのを機に、公安に目をつけられた。
その後、サイバー警察官として警察庁からスカウトされたのである。
「お先ぃー」
と、笑って帰る神代を無視して、亀山は目の前のパソコン画面を凝視した。
隣の大野は、興味深気にひとりで喋り続けている。
「この点滅が、東京ジェノサイド発生前の都内の人の流れってやつ?うっへえ。でも全部ってわけじゃないですよね?把握出来っこない…」
「端末の微弱電波がもとのデータだからね。だけど湾岸エリアしか出してないから…でもこれでもわかる事ってあんだよね」
キーボードを叩く音と同時に、コンピュータ画面の点滅がすべて点灯に切り変わった。
大野は顔をモニターに近付けながら、
「ありゃ? なんだ? あ!3月1日になったんだコレ!」
「さすが元マルサ! 鋭い!」
「で、どうするんです?」
「事象ジェノサイドから10分間隔で、動きのない点灯を消していきますよ!」
「なるほど…よくわからないですが…なるほど」
大野は手を叩いて頷いた。
パソコン画面には東京湾岸エリア、大田区・品川区・江東区の3.01人口流動データ地図が映し出されていた。
亀山がマウスをクリックすると、さっきまで瞬いていた星々の如く、光の点が一斉に消滅した。
隣接する川崎市や横浜市は、境界に沿って微弱電波の光に埋め尽くされてはいたが、東京23区内だけは暗黒世界へと様変わりしたのだ。
大野が呟いた。
「まるでブラックホールですね…あ、あれ? 海の上の光は?」
画面上の東京湾の中に、点滅しながら移動する光があった。それは明らかに内陸部へと向かっていた。
再び亀山がマウスをクリックすると、その点滅は羽田空港近くの天空橋で止まっていた。
亀山が淡々と話し出す。
「東京ってさ、案外水の都だったりするんだけどみんな知らないから教えてあげよう。この場所には水上タクシー乗り場があって、んで、ここは京浜運河って呼ばれてんだけど」
「うっへえー、東京に運河って」
「京浜運河の先には隅田川、そして神田川」
「神田川!?」
「そういうこと!!」
「んじゃ、この微弱電波は?」
大野の問いかけに、亀山は渋い顔をした。
苦虫を潰したようなその顔を見て、大野も同じ表情をしてみせた。
亀山が、
「この光の正体は気象庁の桂。スマホをどっかに隠し持ってたんでしょ素人だから。それと拉致との関係はまだわかんないけど、桂に生きてられちゃ困る連中がいるんでしょ。ま、間違いないのは奴らは水を上手に利用していたってこと」
「けどさカメちゃん!」
「カメちゃん?」
「ごめんなさい、親しみを持ちたく調子に乗りました!失礼しました。亀山さん、この船はどっから来たんでしょう?」
亀山は、不敵な笑みを浮かべた。