テラーノベル
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3話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
次の日。
レトルトは いつもの時間に目を覚ました。
休みの日だろうが関係ない。
アラームが鳴る前に 自然と目が開く。
それが、
レトルトの“いつも通り”。
ぼんやりと天井を見上げて ゆっくりと体を起こす。
そのまま 何気なく横を見た。
血の気のない顔、長い手足。
無造作に広がる黒髪。
そして――
閉じられたままの、赤い瞳。
死神が 隣で寝ていた。
いつもは ソファだったり 天井に張り付いていたり、 意味のわからない場所で 寝ているくせに。
なぜか今日は 普通にベッドの上。
しかも レトルトの隣。
「……」
レトルトは 一瞬だけそれを見て
何も言わずに 立ち上がった。
驚きもしない。
ただ、 いつも通りに。
キッチンへ向かい水を出して フライパンを用意して、 朝食の準備を始める。
包丁の音。
焼ける音。
静かな部屋に 生活音が広がる。
しばらくして――
『……んー……』
ベッドの方から 間延びした声が聞こえる。
もぞ、と 布団が動き死神が 寝ぼけたまま顔を上げた。
ぼさぼさの髪。
片目だけ開けて、 ぼんやりとレトルトを見る。
『……あれ』
掠れた声。
『なんで俺、 ここで寝てんの』
レトルトは フライパンを返しながら
淡々と答える。
「さぁ」
興味なさそうに。
キヨは しばらく考えるように
天井を見て――
『……まぁいっか』
ヘラっと笑ってすぐに考えるのを諦めた。
体を起こして ふらふらと レトルトの方へ歩いてくる。
『……休みなのに いつも通りだな』
レトルトは ちらりとも見ずに言った。
「……お前がいる時点で いつも通りじゃない」
その一言に死神は 少しだけ目を細めて くすっと笑う。
『……確かにな』
黙々と レトルトは朝ごはんを食べていた。
音も立てずに 一定のリズムで。
ただ、 栄養を摂るためだけの動作。
その向かいで――
死神は 何もせずに座っていた。
頬杖をついて観察でもするように じっとレトルトを見ている。
やがて――
レトルトは食べ終え 立ち上がる。
皿を流しへ運び 水を出す。
死神はその背中を見ながら、
『さーて!』
静かな部屋に突然明るい声が響く。
『どこいく?』
わくわくした顔で 子どもみたいに
目を輝かせている。
『レトさん、どっか 行きたいとこないの?』
その視線が まっすぐレトルトに向く。
けれど レトルトは 振り返らない。
皿を洗いながら 淡々と答える。
「……別にない」
一言。
それで終わり。
死神は 一瞬きょとんとして。
でも――
すぐに、 にやっと笑った。
『そっか!』
全く気にしていない様子で、 むしろ 楽しそうにだった。
『俺はねー……』
少し考えるふりをして すぐに顔を上げる。
『映画!!映画 見に行ってみたいな!』
聞かれてもいないのに 嬉しそうに言った。
レトルトの手が 一瞬だけ止まる。
水が 指の間を流れ落ちる。
「……映画?」
死神は満面の笑みで頷く。
『そう!映画! 人間ってよく行くだろ? 泣いたり笑ったりしてさ』
赤い瞳が 興味津々に輝く。
『どんなもんか 気になってたんだよね』
その顔は まるで 初めて外に出る子どもみたいだった。
レトルトは小さく息を吐いた。
「……好きにすれば」
投げるような言い方。
なのに――
死神はぱっと顔を明るくした。
『ほんとに!?』
勢いよく レトルトの方へ近づく。
『じゃあ決まりな!』
勝手に話を進めていく。
レトルトは 洗い終わった皿を拭きながら ぼそりと呟いた。
「……なんで俺も行く前提なんだよ」
その言葉に死神は、
『えー?一緒にいこーぜー!』
死神はレトルトの周りをくるくる飛びながら、
声を弾ませる。
『面白そうなのやってるかもよ?』
顔を覗き込んで、
『なー!お願いー!』
さらにぐいっと距離を詰めて、
『なー!なー!』
子どもみたいに しつこく食い下がる。
レトルトのこめかみに ぴくりと青筋が浮いた。
(……うるさい。)
あまりにも鬱陶しい。
レトルトは 大きくため息をついて――
「……分かった」
一言、吐き捨てる。
その瞬間。
『やったーー!!!』
死神の声が 部屋いっぱいに響いた。
ぱっと顔を輝かせて 大げさに両手を上げる。
レトルトは 眉間に深く皺を寄せた。
「……うるさっ」
低く吐き捨てて、死神 を睨む。
けれど――
死神は全く気にしていない様子で 楽しそうに
ニコニコ笑っていた。
レトルトは 軽く身支度を済ませて外に出た。
玄関の扉を開けた瞬間、 差し込む光に 思わず目を細める。
いつも薄暗い解剖室。
人工灯の下で過ごす時間の方が長いせいか、
太陽の光がやけに強く感じた。
「……まぶし」
小さく呟く。
空は 無駄に青い。
世界は 今日も何事もなく回っている。
(別に俺が死んだって、世の中は勝手に動き続けるんだよな。)
そんな事を考えながらレトルトは黙って歩き始めた。
『何みようかなぁ!!』
後ろから やたらと元気な声。
死神が 両手を頭の後ろで組みながら
ついてくる。
『アクションもいいよな!!』
『ホラーも面白そうだしー!』
レトルトはゆっくり振り向いて ぼそりと呟いた。
「……お前の存在がホラーやろ」
そして――
『ははっ!!』
死神は楽しそうに笑った。
『レトさん、 上手いこと言うねー!』
まるで褒め言葉をもらったみたいに 嬉しそうに。
レトルトは 無言で前を向く。
(……こいつ、アホすぎやろ)
レトルトの嫌味は死神には全く効かない様で
自然と ため息がこぼれる。
その横で死神は 相変わらず楽しそうに
あれこれ喋り続けている。
騒がしい。
うるさい。
なのに――
その声が、 妙に耳に残る。
レトルトは ただ黙って歩き続けた。
レトルトの”いつも通り”じゃない一日が始まろうとしていた。
続く
コメント
6件

ぎゃぁぁぁぁぁぁ もう可愛いー!!! この2人の温度差がいい感じで好きです𐤔𐤔! これから当たり前が当たり前じゃなくなっていくと思うとなんだかワクワクと不安が入り交じってどきどきしてます( ˶>ᴗ<˶)

キヨかわいすぎん???子供じゃん。好き。 レトさんもっといろんなことに興味持って!!

無邪気な感じの🐈⬛めちゃ最高です!
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