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プロローグ

「俺は、今年の夏休みで死に場所探して、死のうと思う。」


彼以外からの連絡を受けないスマホが、久方ぶりに震えた。


「僕も連れてってください。一緒に―」


死にます。なんて続きは打たなかった、打てなかった。彼の死を肯定するようで。でも、救ってくれた人を、自分の預かり知らぬところで亡くすよりはと思って、書きかけの文を送り付けた。


ものの数時間後、一人暮らしのアパートのインターホンがならされた。

ピンポーン

そこには、今から友人と遊びに行きますと言わんばかりに軽装な彼、雪さんが立っていた。


「雪さん、涼しそうでいいですね・・・って、なんでそんなに軽装なんですか。まさか、その辺でフラッと立ち寄った場所で死のうってんじゃないでしょうね」


軽口を叩きながら一度部屋に招き入れる。生憎、玄関口までしか来てくれないが。不服そうな雪さんは開口一番溜息をつき、一言。


「お前、死ぬ気ないだろ。どういうつもりだ?」


やっぱり、あなたに嘘をつくことは不可能なようだ。でも、本当のことは最期の日に言うつもりだから、本音は隠しますね。


「ないですよ?でも、命の恩人を1人孤独死させる訳には行きませんよ。そもそも、1人にさせる気なんてさらさらありませんし。」


なんてことを言いながら、荷造りを進める。財布に着替えにスケッチブック、筆記用具に日記帳、雪さんにも入りそうな服をいくつか詰めて。僕は到底死ぬつもりは無いから戸締りだってして。


「行きましょうか?雪さん。極楽探しの旅に。」


やっぱり、死に場所探しにはいかんせん軽装で、やっぱり不機嫌な雪さんを見て、無理やり笑いながら。僕らは極楽探しの短い旅に出かけた。


神様死願日記―2週間の極楽探し―

神様死願日記ー2週間の極楽探しー

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