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シリル「もうっ…十分じゃない…!?」
イリア「ダメよ…!」
シリル「絶対…も…いいって…ぜぇ……」
2人はぜぇはぁと息を切らしながら、やめるかやめないか言い争っている。
シリル「あーもう、いちぬけっ!」
イリア「主力が!!もう…分かったわよ…。それじゃあ離れたところから開けてみましょうか。」
シリル「よし!」
ブライア「あれが時梅雨の花、あれがメアミィの花。そしてこれがうちのバカがやらかしたりんごの木。でも、果実は美味しいし花も綺麗でね。うちのりんごはもう食べた?」
ジーク「あぁ。美味しかったよ。また食べてもいいなあれは。なぁ、アリィ。」
アリィ「……。」
セドリック「お客さん大丈夫か?ぼーっとしてるみたいだが…」
アリィ「えっあっごめん!なに!?」
ジーク「…体調大丈夫か?」
アリィ「大丈夫だよ。心配しないで。えっと…確かりんごの話だよね。うん!凄く美味しかった!」
ジーク「それならいいが…」
アリィ(…白昼夢とか…笑えない。)
イリア「大正解だったわね。」
シリル「この袋は毒液を貯めるための臓器だったみたい。それが逆流してオアシスに流れ込んだ…と。」
イリア「とりあえず、袋は取り除いたけれど…元通りになるには何年かかるかしら。」
シリル「心配ないよ。オアシスの付近の土地は理由は分からないけど自浄作用があるみたいだから。でも、自浄とはちょっと違うか…。」
イリア「ねぇ、気になったんだけど…」
シリル「?」
イリア「雨が毒の雨だったのも、何故かヒトだけが溶けるのも分かったわ。悪魔は好んでヒトを食べるもの。…でも、この砂漠でそもそも何日も雨が降る理由は?」
シリル「凄く嫌な予感がするよ。」
イリア「奇遇ね。私もよ。」
シリル&イリア「もう1体、居る。」
急に足元が冷える。砂漠だというのに、お互いの白い息が見える。
イリア「…サービス精神旺盛ね。シリル、防寒着持ってる?」
シリル「もちろん。」
イリア「ほんと最高。悪魔じゃなくて、貴方がね。」
シリル「でも僕のアプローチは受け取って貰えないの?」
イリア「ええ。…もう冗談はやめて。あの話を聞いた後でまだ好きでいられるはずないわ。」
シリル「それでも好きだよ。」
イリア「…知ってる。貴方は優しいものね。」
また体感温度が低くなる。思わず凍えてしまいそうな、寒さにシリルは怯むことなくナイフを構える。やがて霧の中から、うっすらと背中に氷柱の生えた全身が白い四足歩行の悪魔が見える。シリルはオアシスで死んでいる悪魔を横目に迫り来る脅威に言う。
シリル「この子をやったのは君だね?」
アリィ「イリア達遅いね。もう夜になっちゃったよ。」
ジーク「あいつら、防寒着持っていってたか?」
アリィ「ごめんそこまでは知らないや。」
ジーク「…そうか。」
アリィ「今日聞いた話不思議だったな。」
ジーク「恒陽の国と永夜の国の話か?」
アリィ「うん。」
ジーク「…確かに宗教上の理由で分断とかは聞いたことあるが…それ以外となるとな…。何があったのか…。なぁアリィ。」
アリィ「うん。」
ジーク「次の目的地の話なんだけどさ。」
アリィ「…もしかして本当は時の国のつもりだった?」
ジーク「…ああ。でも今行くとまずそうだ。俺達だって政治には巻き込まれたくない。…でもどこに…」
アリィ「ポルポル、地図出せる?」
ポルポル「ギ。」
ポルポルは器用に地図だけを落とす。
ジーク「…なんか凄い自由効くようになってない?」
アリィ「暇で仕込んだ!」
ジーク「ちゃんと休みなさい。」
アリィ「ハイ。」
ジーク「んー…やっぱり時の国が1番条件がよかったんだが…他の国は遠いし…」
アリィ「時の国の部分の地形だけ凹んでるけど…もしかして港がある?」
ジーク「おお、よく分かったな。昔はそうだった。今はちょっとどうなってるが分からないが…まぁでも港まで行けても身分証がな…」
アリィ「…待って身分証、シリルならどうにか出来るかも。ほら、彼傭兵でしょ?荷物になる他にも色々知ってるかも。時の国の港はセドリックさんに聞いてみよう。」
ジーク「そうか、シリルに聞けばいいのか。じゃあ身分証はシリル待ちで。うん、セドリックに聞いてみる。ありがとう。」
アリィ「お礼を言われるほどの事じゃないよ。目的地は一緒に決めるものだしね。」
ジーク「それじゃあ俺は早速セドリックさんに聞いてくる。」
アリィ「はーい。」
ジークがパタンと静かに扉を閉じ、出ていく。
アリィ「ポルポ…」
突如ガチャっと扉が開く。扉の外からジークがアリィを睨む。
アリィ「わ、分かったよ…。ちゃんと休むから…。」
ジーク「よろしい。」
再びジークは扉を閉じ、階段を降りていく。
ジーク「…なんか腕に違和感が…虫じゃないな…。ってこの暑さじゃいるわけないか。」
ブライア「あ、お客さん。」
ジーク「ブライアさん。珍しいな、セドリックさんと一緒じゃないの。」
ブライア「ちょっと今二手に分かれて皆さんにブランケットを配ってて。お客さんもどうぞ。」
ジーク「ブランケット?」
ブライア「急に気温が低くなって、寒くなってきてるんで。」
ジーク「あ、ほんとだ。よく見たらこれ鳥肌とってるな俺の腕。俺も手伝おうか?」
ブライア「いやいや!お客さんにそんなことさせる訳にはいかないんで!」
ジーク「ならいいが…ブランケットもう1枚貰ってもいいか?アリィが寒がりなんだ。渡しておきたくて。」
ブライア「どうぞどうぞ。」
ジーク「ありがとう。」
(これじゃセドリックさんに聞くのは無理そうだ。ブライアさんも忙しそうだし…。)
ブライア「もうこれから日が暮れるのに今からこんなんじゃねぇ…。天変地異でも起きるんじゃないかと思っちゃいますよ。」
ジーク「天変地異ねぇ…。」
(なんか…更に寒くなってきてる気が…急いで渡しに行かないと。)
ジークが慌てて、2階のアリィの休んでいる部屋に戻る。扉を静かに開けるとアリィは寝息をたてて寝ている。
ジーク(…ちゃんと言いつけ通り休んでるな。)
ジークはアリィの被っていた毛布に重ねるようにブランケットを1枚置く。
アリィ「…ん……。」
ジーク「おやすみ。」
そう言った後、ジークは全身を震わせる。
ジーク「流石に俺も寒くなってきたな…。」
ポルポル「ギ?」
ジーク「大丈夫だ。ポルポルも、アリィと同じ布団に入ってな。」
ポルポル「ギ。」
ジークがそう言うとポルポルはもぞもぞとアリィと同じ毛布の中に入る。
ジーク(防寒着はどのみち夜は着ないと耐えられないから、個室に置かせてもらってるしポルポルに出してもらうものは無いはず…。ちょっと防寒着に着替えた方がいいなこれ…。…アリィ薄着だったよな…)
ジーク「今診てくれてる人は女性だったはず。頼んでおかないと…今どこに…」
医者「ここでーす。」
ジーク「うわっ…!?」
イリアが玄関を開ける。直後に叫び出す。
イリア「誰かー!火!火!持ってきてこれ溶かして!」
シリル「へっくしゅ!さむいぃ…。」
セドリック「お、おお…!お前達早かったな。」
ブランケットを持って走り回っていたセドリックは、イリア達の元に歩いてくる。
セドリック「ってここさむっ!」
シリル「そ、そのブランケット借りてもいい?」
セドリック「あ、あぁ。元々そのつもりで配ってたし…。」
イリア「ありがとう…うぅ寒い…。」
セドリック「一体何がどうなって…。」
イリア「とりあえずこれを早々にどうにかしないと。」
イリアはそう言いながら、横にズレる。セドリックの目に映ったのは背中に氷柱の生えた悪魔だった。
セドリック「うわああ!あ、悪魔…」
シリル「安心して、もう死んでるから。雨の根本的な原因もこれで解決できたよ。」
イリア「ただこれのせいでかなり寒くて…自然に氷が溶けるの待ってたら何年先になるか…。」
セドリック「と言ってもこれだけの大きさの氷を溶かせる火だなんて…」
突如、誰かのお腹がぐぅ〜と鳴る。
セドリック「…大事な話の最中にお腹が空いちまう食いしん坊さんは誰だ?」
イリア「私違うわよ?」
シリル「僕も違う。」
ブライアがセドリックの横で挙手する。
ブライア「私。」
セドリック「うおっ!?」
ブライア「うちの頭の叫び声が聞こえたんでね。」
セドリック「さっきのお腹の音で、護衛しようとしてたは説得力がないぞ。」
ブライア「…だって氷だし、氷菓が食べられそうかなって…。」
セドリック「氷菓…いいこと思いついた!」