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10話目もよろしくお願いします!

スタートヽ(*^ω^*)ノ




夜の激しさが嘘のように、朝は静かだった。


カーテンの隙間から差し込むやわらかな光が、ぐしゃぐしゃの布団と、寄り添い合う2人の影を照らしていた。


キヨの腕の中で、レトルトはすっかり力を抜いて、心地よさそうに目を細めていた。

ベッドの上にはまだ昨夜の熱がかすかに残っているけれど、それも今は、2人の体温に溶け込んで、ただのあたたかさになっていた。


『……おはよ、レトさん』


キヨが、低く甘い声で耳元に囁く。

レトルトは少し照れたように笑って、小さく「おはよ」と返した。


しばらく、何も話さずに、ただ見つめ合っていた。

お互いの存在を確かめるように、頬を撫で、髪を撫で、キスをして。

静かな朝、静かな愛撫。

騒がしさのない、穏やかな幸せがそこにあった。


すると、キヨがふと目を細めて言った。


『……ねえ、レトさん。ちょっと目、閉じて?』


「え?」


『いいから、俺を信じて。すぐだから』


少し戸惑いながらも、レトルトは素直に目を閉じた。

瞼の裏がほんのり明るい。キヨの体温がすぐそばにある。

ふっと、 優しく、左手が持ち上げられる感触。


『……いいよ、開けて』


レトルトがそっと目を開けると、左の薬指に、細い銀の指輪がはまっていた。

ごくシンプルで、でも温かみのあるデザイン。



「……キヨくん、これ……」


驚きと戸惑いで声を失うレトルトの目を、キヨは真っすぐに見つめた。


『俺は、死ぬまでレトさんと一緒にいたい。ずっとそばにいたい。これからはずっと一緒にいて。

起きたときも、寝る前も、笑うときも、泣くときも、俺の隣にレトさんがいてほしい。

レトさんは俺の全てだ』


レトルトは何も言えなかった。

言葉にしようとしたら喉の奥がつまって、目頭がじんわり熱くなって——

ただ、無言で何度もうなずいた。


その反応に、キヨがほっとしたように笑って、そっとレトルトの額に口づけた。


2人の間に言葉はいらなかった。

これから先も、きっと喧嘩するし、泣かせたり泣いたりすることもある。

でも——この人となら、生きていける。



静かに光る指輪が、これからを誓うように、2人の未来をあたたかく照らしていた。





『俺が作ってたアプリ。完成したから、今日の午後に完成披露発表がテレビで全国生中継されるからさ。レトさん絶対見てね!』


キヨはスーツのネクタイを締めながら鏡越しにレトルトに言った。


「わかった!絶対見る!録画もしとこ〜 」


レトルトはキヨがテレビに映ると知って

朝から上機嫌。


『じゃ、行ってくる!……帰ったら、また感想聞かせてね!』


「いってらっしゃい、キヨくん」


笑顔でキヨを送り出しソワソワしながら発表の時間まで仕事をするレトルトだった。



ソファに座り、膝にクッションを抱えてテレビ画面を見つめていた。

画面には大きなステージと、スーツ姿のキヨが映っている。

ライトを浴びながら堂々と座っているキヨの姿に胸が高鳴る。


司会者がマイクを向け、会場が静まり返る。

キヨは一瞬だけ深く息を吸い、マイクに向かって喋り始めた。


『えー……今回、僕が開発したアプリがこうして形になって皆さんに紹介できることを、本当に嬉しく思ってます。』


大きな拍手が起こる。


『……正直に言うと、このアプリを完成させるまでに色々な苦悩がありました。

今、こうして発表できるのは――僕のことを、見ていてくれた愛する人がいたからです』


その言葉に、レトルトの心臓が跳ねた。

テレビの前で、じっと画面を見つめたまま動けなかった。


『その人がいなかったら、俺は多分途中で全部投げ出してました。

たくさん傷つけて、たくさん怒らせたけど。

それでも……その人がいたから、今僕はここに立ててます』


キヨは照れ隠すように一瞬視線を落とし、それから少し口元をゆるめて――



『俺の彼氏は世界一なんです』


大きな拍手が会場に響き渡った。


画面越しのレトルトは、もうテレビを見ていなかった。

自分の胸の奥にある鼓動だけが、はっきりと聞こえていた。


(キヨくん……)


頬に一筋、熱い涙が伝っていた。



カメラが寄り、キヨの真剣な表情が画面に大きく映る。


カメラの前で左手の薬指にはめられた銀の指を撫でながら。

テレビの前で貰ったばかりの銀の指輪を撫でながら。


お互いに唱えた言葉は同じだった。



『「俺の彼氏は世界一」』



完結






大好きなキヨ×レトの妄想話に長々とお付き合い頂きありがとうございました!


いいねやコメントを頂けてとても嬉しかったし、励みになりました。


この後、番外編を少し書くつもりです。

それも読んでいただけると嬉しいです🥹






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