正午を過ぎたところで、車は神奈川の鵠沼海岸近くの駐車場に到着した。
海開きしたばかりなのか、至る所に海の家が立ち、カラフルなパラソルが散りばめられている。
海水浴に来ている人や、江ノ島方面へ向かう観光客も多い。
奈美は車から降りると、強烈な白日光に手を翳した。
「日差しが強くて、夏って感じだな。奈美ちゃん、お昼過ぎたけど、腹減ってない?」
彼が奈美を気遣うように、顔を覗き込む。
「まだ大丈夫です。豪さんは?」
「俺もまだ平気。とりあえず、海岸を少し歩くか」
「はい」
サングラスを掛けたままの豪が、奈美の手を取り、海岸へと足を向けた。
「それにしても人がすごいな。少し歩いてもいいか?」
人の多さに辟易したのか、豪が奈美を見下ろした。
「全然、大丈夫ですよ」
「もし疲れたら、俺に言ってくれるか? すぐ休憩するから」
「はい、ありがとうございます」
豪は奈美の手を繋ぎ、二人は砂浜を踏みしめるように歩みを進めた。
海岸を東の方向に歩き、時々立ち止まって海を眺める。
言葉を交わした後、再び歩き始め、潮風と抜けるような青空を感じながら、海辺の散策を楽しんだ。
彼と一緒に歩いているだけでも、彼女は嬉しい。
「豪さん、波打ち際まで行ってもいいですか?」
ふと奈美は立ち止まり、豪を見上げる。
「いいけど、気をつけろよ」
「はいっ」
彼女は彼から離れ、少しの間、波と戯れる。
そんな様子を離れた場所から見ている豪。
時々、足元にかかる波しぶきが気持ちいい。
砂浜を見やると、彼はスマホを取り出して、景色を撮っているようだった。
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