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今まで滅多に喋らなかった私がはっきりと言葉にした。その事に彼らは驚いている。
「あのね、魁さん。施設は18歳になったら、その…出ていく事になるの。だから、私たちとしてはずっとそばにいてくれる親戚の方がいる方がいいんじゃないかな…」
カウンセラーの人が私の背中を擦りながら言う。心理学を使ったテクニックだろうか。私にそういうのは通用しない。
「なんで、親戚の家だと嫌なんですか?教えてくれませんか」
弁護士が口を開く。なるほど、弁護士は私と対等な関係として話してくれている。警察も同じだ。だが、カウンセラーだけは私を自分より下という認識で話している。だからこの人は嫌なのか。
「話したくないですか」
私が人間観察で沈黙してしまったせいで話したくないと勘違いされてしまった。
「私が生まれて両親が他界して、私が一緒にいて兄が他界しました。私は疫病神です 」
私の言葉に驚きを隠せないのか、彼らは目を見開く。カウンセラーが警察と弁護士を連れて外へ出ようとする。
「魁さん、このぬいぐるみとお話してて貰えるかな」
カウンセラーがうさぎのぬいぐるみを渡す。私は15だ。そんなことしない。だが、した方が彼らにとって助かるのだろうか。
ぬいぐるみを見つめる。色は真っ白で、目だけが赤いビー玉のようだ。新品なのか、独特の匂いがする。
話していろ、と言われても。何を話せばいいのだろうか。
「今、外の景色はどんなだろうな。窓からは壁しか見えないからわからないや。もうすぐ昼ごはんの時間だね。お腹空いたなぁ。お兄ちゃんのご飯、美味しかったなぁ」
沢山話しかけている内に、鼻の奥がジンとしてきた。
「お兄ちゃん、料理上手だったなぁ。生姜焼きが1番美味しかった。あぁ作り方教えてもらえば良かったなぁ…沢山話して、沢山出かけて、沢山思い出作れば良かったのに…」
おかしい、目から水が出てくる。口からも、今まで言った事の無い言葉が出てきそうだ。
「寂しい…寂しいよ、お兄ちゃん…」