テラーノベル
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「行かせて良かったの、佐久間」
「んえ?…あったり前じゃん。って答えんの分かってて聞くなよ、趣味悪いなぁ」
「ははは、念の為にね。悪趣味のお詫びに取っておきをご馳走様するよ。伝手を頼ってやっと手に入ったんだ」
宮舘が腰を屈めて取り出したワインボトルは滅多にお目に掛かれない逸品。たとえ大枚を叩いても。見やすいように掲げられたラベルを読むにつれ、佐久間の目の玉がみるみる大きくなっていく。ワインに明るくなくても知っている銘柄が記されていたからだ。
「……マ…ジ?いいの、俺飲んじゃって。ワインよく知らないぜ?」
「だからこそかな。薀蓄より味の素直な感想を聞きたいからね。…あぁ…ただ、俺とあと一人増えてもいいのなら」
「あ~…うん、見えた見えた。客いると入って来ないって都市伝説じゃなかったんだ」
「いつの間に伝説になったの?……お帰り、翔太。ん…いや、伝説の勇者よ」
二人が見詰める扉の磨り硝子にピョコピョコ映っている人らしき影が件の都市伝説。ではなく、宮舘が向井のラブコールを袖にし続ける〝理由〟。ボトルを一旦カウンターへ預け、カツカツ革靴を鳴らして数歩の入り口を開くや否や某ゲーム風王様を気取って出迎える宮舘に佐久間が大笑いで手を叩く。
しかし、まだ店外に立ちっぱの勇者兼渡辺はまっったく着いて行けずに?をたくさん飛ばしまくっている状態。笑いが伝染したか相好を崩して扉を押さえ、スマートにエスコートをする宮舘を胡散臭そ~うに眺めつつもホッとしたように口元を綻ばせる。
「……ただいま、って…客いるじゃん。まぁ、佐久間ならいいか」
「あれれぇ、おっかしいな~。そこは『佐久間に会えて翔太嬉しいっ♡』なんじゃないの~?」
「30過ぎて小一のモノマネきっつ!~…別に特別嬉しくないからおかしくない」
「じゃあちょっとは嬉しいんじゃん。よっ!さっすがツンデレ界のナンバーワン!」
「……やっぱ外出てる。佐久間帰ったら連絡して」
「まぁまぁ。佐久間、俺の翔太で遊ぶのそろそろ止めてあげて。治安良くない場所なんだし、翔太がもし襲われでもしたら…、…俺はまた業を重ねてしまうだろう」
「ばか…俺の為に危ない真似なんてすんな。逆の立場だったら涼太もそう思うだろ?」
「翔…太」
店の一角が甘ったるいピンク色で染まるのを佐久間は確かに見た。砂でも吐きそうな顔で、さっきとは真逆の意味で手をパンパン叩く。
「はいはいはいはいっ!でー?二人は漫才やってんのかラブラブ見せ付けたいのかどっちなワケ?」
「どっちも」
「どっちでもない」
「くっ…やっぱ見せ付けかっ!あ~あ、阿部ちゃんといい蓮といいやってらんねぇ。コレ!開けんぞ、だて」
「ちょっと待って。開けるのは俺に任せてよ。…ほら、歯でコルク抜こうとするの今すぐ止めて」
「はははっ…やけに絡んで来ると思ったら、やっぱり阿部ちゃんで荒れてんだ。だったら尚更涼太に任せろって。つか俺も飲みたいからやるな」
「ぶ~~…二人してなんだよもう。分かりやしたぁ、大人しくコップ持って待ってますぅ」
二転三転したワインボトルを手中で愛でてから、宮舘は慎重に開栓の儀式に取り掛かる。歯型付きのコルクは思い出の品として端へそっと取り置く。何時かこれを眺めて『こんな事もあったね』と話に花が咲かせられますようにと。
用意した二つのワイングラスへ紫みを帯びた深い赤を同量注ぎ、可愛く差し出された佐久間コップへも注ぐ。どう見てもそのコップというかグラスはウィスキーを飲んだ後のものだが、宮舘も渡辺も佐久間も気にしない。適当な緩さが三人には心地よい。
ちん…。
黙しての杯向け。グラスを傾けてワインを燻らせ嗅ぐ者、一口飲むたびに首をちょい捻りする者、ぐびぐびぐび~~で空にする者と楽しみ方は三者三様だったが、目を見交わしての感想は綺麗にシンクロするから面白い。
「ほぅ…美味。それ以上の表現が思い浮かばないな」
「…うん。最初分かんなかったけど、飲んでいく内に深み?みたいの感じて凄く美味しい」
「俺格好いい事言えないからさ~…美味いっ!もう一杯!だな!…だてぇ…も…いっ……」
一気飲みの上色褪せないフレーズをまたもやモノマネで言い切った直後、急ハンドル急減速してテーブルに崩れたのは佐久間。成り行きで隣に座っている渡辺は、展開の速さに言葉が出ない。残る宮舘は困ったさん風に微笑む。
「翔太が来る前から結構飲んでたからね…色々あったし、今はそっとしておこう」
「あー…そりゃ寝るわ。ん…でも此処で寝たら体痛めんじゃない?」
「頃合を見て起こすよ。でも今は…いい夢を見て欲しいんだ。暗い道を歩いて一人の家に帰るより、此処の方が夢見が良さそうな気がしてさ」
「………で?」
「なに、寂しくなっちゃった?」
バックヤードから持って来た膝掛けを佐久間へ羽織らせ、更に畳んだバスタオルを突っ伏している顔下へ潜らせる献身さに感心すると同時、嫉妬心がむくむく芽吹く。
『目の前でこんなの見せられて、俺どうしたらいいんだよ』 が『で?』になったのに、たった一言で分かってしまう宮舘の愛情が…ただただ渡辺は嬉しかった。
「寂し……から、キスして」
「…喜んで」
深い眠りの呼吸が聞こえる。息と距離を詰め宮舘は腰を、渡辺は肩を抱いて触れるだけのキスを交わした。
コメント
5件

ゆり組回!!!萌えるます💕 ちょっと🩷が可哀想ですが、3人の掛け合いが可愛いですね☺
ゆり組最高🤭🤭🤭❤️💙
ああ〜〜〜!!第七幕もエモすぎてもう無理😭💕 佐久間の一気飲みからの崩れ落ちる流れと、残された宮舘&渡辺の空気感が最高すぎた…!!「寂しいからキスして」→「喜んで」の流れ、こんなん惚れるやつやん…!三人それぞれの関係性がじんわりにじみ出てて、読んでるこっちもほっこりしちゃったよ〜🌸✨ 篝火さん毎回神すぎて泣く。次も全力で読みに行くからね!!📖💕
#推しカプ