「ただいまー」
玄関からでかでかと声をかけてくる男をなんとなく出迎える。
「おかえりなさい。佐野さん」
「お、仁人来てたんだ」
「しらこっ」
ただいまと言っておきながらなんとしらこい奴。
「ふはっ、嘘だわ」
「めんどっ」
テンションが高めの佐野さんを煩わしくあしらいながリビングに戻るとパタパタと追いかけてくる。
「なん、仁ちゃん怒ってんの?」
「別に怒ってなんかないですよ。ただめんどくせぇなって」
「怒ってねぇなら、ん」
目を瞑って顔を突き出してくる佐野さんの行動に頭を傾げて問う。
「なに?」
「は?なにって、おかえりのちゅーだろ」
「はぁぁあ?!しませんよ!」
「んでだよ。しろよ。ほら」
また、目を閉じる佐野さんは引く気がないようで…仕方ないので佐野さんの肩に手をかけて少し背伸びをするように勇斗の頬に口付ける。
「はい。しましっ…んっ」
お終いと離れたはずの唇は気づけば勇斗に塞がれていた。
「んっ…ぁ」
息を吸い込む為に薄く開いた口にすぐさま滑り込んできた舌が咥内で暴れる。舌を絡められ、上の歯下の歯と歯列をなぞられ腰をぞわぞわとしたなにかが駆け上がり脚の力がカクンっと抜け、勇斗に支えられないと立っていられなくなった。
「おっと、大丈夫か?」
「ん、はぁ…はぁ…だれの、はぁ…せいだと」
「俺?」
んはっと笑う佐野さんが満足気で腹が立つ。
「ほんと、ちゅー好きだよな、勇斗って」
「キスが好きってか、仁人とするのが好き」
「っは?!」
「Mステの時にも言ったろ。ぽてっとした唇が可愛いって」
なんなのこいつ…
「もぅ…おまえやだぁ…」
「照れた時、耳真っ赤なんのも可愛いじゃん」
「……見惚れてるんじゃん」
「おん。仁人しか見えてねぇよ」
即レスしてくれる佐野さんに悪い気はしないが恥ずすぎる。
END
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