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「中井さん!良ければ僕と付き合ってください」
「ごっ、ごめんなさい、!」
「そう、ですよね、。ありがとうございました」
夏休みが始まる。
夏特有のあの匂いと共に蒸しっとした暑さがやってくる。
「また告白されたんだ」
「うん、」
彼女は告白が嫌い。
知ってるけれど虚しくなる。
「夏だね、」
「うん、夏だね」
クーラーとペンの音以外聞こえない静かな部屋。
課題をはやく終わらせるためにペンを走らせる。
もう3分の2は終わった。
夏休みが始まって5日。
一度も外へ出ていない。
私の腕は真っ白のまま。
そんなことを考えていると滅多に鳴らないスマホの通知。
ロック画面には彼女の名前と共にメッセージが途中まで書かれた通知が光る。
️『明日暇?』
『ここ行きたい』
『いやでも遠いか、さすがに』
『お小遣い無くなりそう』
『いや、分かんないけど』
『電車がいいかな?』
そう話したいことを話して行く前提になっている。
私は立ち上がり部屋の窓を開けに行った。
「紗良!ここじゃ分かんない」
そう大きな声で叫ぶ。
窓が空いて彼女が顔を覗かせる。
スマホを片手に私が見えるか見えないかの距離で見せてくる。
「あぁ、隣町の海ね。」
「いいけど、紗良課題やってる?」
そう言うと不満気な誤魔化すような顔をして俯いた。
「一個も、やってない」
「そうだと思ったよ、」
何処か斜めを向いて口を尖らせる彼女。
「また今度やろ。」
「うん!」
目を輝かせて私の方を見る彼女。
可愛くて仕方がない。
朝。
窓を開けて空気を取り込める。
彼女の部屋の明かりは付いていない。
まだ寝ているのだろうか。
部屋の戸を開け階段を下る。
洗面所に行き顔を洗った。
それはそれは冷たい水で。
ふと顔を上げるとそこには綺麗で真っ白な肌に切れ長の目、すっと通った鼻、血色感のあるピンクの唇。
凄く綺麗な顔立ちだった。
誰もが欲しがるような、美しい顔。
ただそれがなんだか憎くなってくる。
それと同時に気持ち悪さが込み上げてくる。
私の中身と正反対の顔。
それがなんだか嫌だった。
綺麗だね、と顔立ちしか褒められた事が無いから。
私はきっと見た目に執着し過ぎていたのだと思う。
こんなの私じゃない。
今目の前にある鏡を割りたいと思う程自分の顔が嫌いになっていた。